「どうしようか…」「これで合っているのか…」と迷っているうちに、気がつけば時間が過ぎ、チャンスを逃してしまった──そんな経験はありませんか。
転職や副業のスタート、投資の判断、あるいは日常の買い物に至るまで、私たちは毎日のように決断を迫られています。しかし、いざ「決める」となると足が止まってしまう。「もっといい方法があるのでは」と考えすぎたり、「失敗したらどうしよう」と不安になったりして、結論を出せないまま時間が流れていくのです。
けれども、現代を生き抜くための最も重要な技術のひとつは、「速く決めること」 です。
私はラジオディレクター時代に、放送で扱う中継テーマをなかなか決められず、放送日が迫って胃が痛くなった経験があります。打ち合わせの場でも「これでいいのか」と迷い、先輩から「ディレクターは“決めるのが仕事”だ」と言われた言葉が今も強く残っています。
速く決めることの価値|柳生雄寛『決める技術』より
柳生雄寛さんの著書『決める技術』には、まさにこのテーマが語られています。
そこではこう説明されていました。
決断できるようになることはもちろん重要ですが、今の時代には「速く」決めることがより求められるようになっています。
なぜか。時代の変化のスピードがかつてより圧倒的に速くなっているからです。
かつて「十年ひと昔」と言われた社会も、今では5年、業界によっては1〜2年で標準や技術が大きく変わってしまいます。スマートフォンの進化、AIの台頭、ビジネスモデルの更新…この変化に追いつけない企業が倒産し、同じように変化についていけないビジネスパーソンは社内で埋もれてしまう。
つまり、変化が速い時代においては、決断の遅さがそのまま「機会損失」になってしまうのです。
そして多くの人が心配するのは、「速く決めると失敗するのではないか?」という点です。柳生さんはこの問いに対し、明確に答えています。
速く決める人は、失敗してもすぐ次の一手を打てる。だからトータルで成功する。
1回目から正しい決断ができる人はいません。人間は神ではないからです。成功もあれば失敗もある。それでも、決断を速く行う人は失敗からの復活も速い。結果的に、細かく見れば失敗も多いけれど、それ以上に成功を積み重ね、プラスを生み出せる。
つまり、世の中でうまくいっている人は「失敗が少ない人」ではなく、「失敗してもすぐにリカバリーできる人」なのです。
この考え方は、私が放送現場で学んだ「決めるのが仕事」という言葉とも重なります。中継テーマにしても、あれこれ悩むより早めに決めて動くほうが、リサーチも準備も間に合い、結果的にいい番組になる。後から「違った」と気づいたとしても、その次に速く修正すればいい。結局、スピードが未来をつくるのです。
人はなぜ決められないのか?
では、なぜ多くの人が「速く決める」ことを難しく感じるのでしょうか。ここには人間の心理的なクセが関係しています。
失敗を恐れる心
心理学には「損失回避」という言葉があります。人は得をする喜びよりも、損をする痛みを2倍強く感じるという性質です。だからこそ「もし失敗したらどうしよう」と恐れてしまい、決断が遅れるのです。
完璧を求めすぎる
「最適解を選ばなければならない」という思い込みも、決断を鈍らせます。ラジオ中継のテーマ探しで「もっといい案があるはずだ」と悩んで締切を迎えた過去の自分がまさにそうでした。完璧を目指すほど動けなくなる──これが決断できない人の典型です。
情報が多すぎる時代
インターネットでいくらでも情報が調べられる現代は「選択のパラドックス」の罠に陥りやすい。選択肢が増えるほど迷い、結局何も選べなくなるのです。
他人の目を気にする
「周りからどう思われるだろう」という意識も大きな要因です。SNSで誰もが判断を公開できるようになり、失敗すれば笑われるのではと考えてしまう。その結果、自分の軸で決められなくなってしまいます。
決断疲れ
人は1日の中で「決める体力」を消耗します。これを「決断疲れ(decision fatigue)」と呼びます。朝ならすぐ決められることも、夕方には「まあいいか」と先送りにしてしまう。つまり「決められない」のは性格ではなく、脳のエネルギー切れという場合もあるのです。
速く決めるための小さなヒント
「速く決めろ」と言われても、いきなり性格を変えるのは難しい。だからこそ、実生活で取り入れやすい小さな工夫が役立ちます。
- 選択肢を減らす:服を「これとこれ」と事前に決めておく。
- 時間制限を設ける:「5分で決める」とルール化する。
- 小さな失敗を許す:「まずは試す」と決めてしまう。
- 基準をシンプルに:「ワクワクするかどうか」で即断する。
これらはどれも、スピードを意識して「決断疲れ」を減らす工夫です。
結論|決めることで前に進む
人はなぜ決められないのか。その理由は「失敗を恐れる」「完璧を求める」「情報過多」「他人の目」「決断疲れ」といった心理や環境にありました。けれども、それを乗り越える一番の方法は、やはり「速く決める」こと。
速く決める人は、たとえ失敗しても次の一手が速い。だからトータルで見れば成功を積み重ねることができるのです。
放送現場で「ディレクターは決めるのが仕事だ」と言われたように、私たちの日常も「決めること」で前に進みます。悩んで動けない時間こそが最大の損失。まずは小さなことから速く決める習慣をつける。そこから人生のスピードは変わっていきます。
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この記事を書いた人|ミライジュウ
メディア関連企業の業務部長。ラジオ演出30年の経験を経て、
「50代からでも“1円を生む力”は育てられる」と信じて発信中。
毎朝4時起きでランニング・筋トレ継続中。
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