「時間ができたらやろう」はなぜ嘘になるのか?──「体が先、脳が後」で人生が動き出す理由

「いよいよ年末。まとまった時間ができたら、あの場所を掃除して、溜まった家事も一気に片付けて……」

そう意気込んでいたはずなのに、いざ自由な時間が手に入ると、なぜか体が動かない。結局、YouTubeを眺めたり、昼寝をしたりして一日が終わり、夜になって「あぁ、今日もできなかった」と激しい自己嫌悪に陥る。

そんな経験はありませんか?

不思議なのは、私の場合、読書や勉強ならスッと取り掛かれるということです。これらはすでに習慣化しているからでしょう。しかし、掃除や食器洗いとなると、どれほど「時間ができたらやるぞ!」と決意していても、いざその時が来ると「やる気」が霧のように消えてしまうのです。

「知っているはずなのに、できない」
「やる気はあるはずなのに、動けない」

なぜ、私たちの脳はこれほどまでに「自由時間」を使いこなすのが下手なのでしょうか。その正体を突き詰めていくと、ある一つのシンプルな、しかし残酷な真実に行き着きました。

結論から言えば、やる気を待っている限り、その時は永遠に訪れません。大切なのは「体が先、脳が後」です。

なぜ、考えるのをやめて「有無を言わさず現場へ立ち去る」ことが、年末の家事だけでなく、定年後のコンテンツビジネスにおける「自走力」をも鍛えることになるのか。私の実体験と脳科学の視点から、この「脳のバグ」の攻略法を紐解いていきます。

なぜ「時間はたっぷりある」のに動けないのか

私たちは「時間さえあれば何でもできる」と考えがちですが、実は「時間があること」が、かえって行動のブレーキになることがあります。これには2つの心理学的な罠が潜んでいます。

パーキンソンの法則
「仕事の量は、完成のために与えられた時間をすべて満たすまで膨張する」という法則があります。締め切りが「15分後」なら超人的な集中力を発揮する脳も、「休み期間中ならいつでもいい」となった瞬間に、緊張感を失います。脳はエネルギーを節約するために「今はまだいいよ」という甘い囁き(言い訳)を無限に生成し始めるのです。

決定疲れ(Decision Fatigue)
会社員としての私たちは、長年「決められたスケジュール」の中で動いてきました。しかし、自由な時間は「何から始めるか」「どの順番でやるか」をすべて自分で決めなければなりません。この「決める」という作業は、脳のエネルギーを激しく消耗させます。結局、決めることに疲れた脳は「何もしない」という一番楽な選択肢を選んでしまうのです。

難易度の逆転|難しいことはできるのに、簡単なことができない理由

普通に考えれば、難しい本を読むより、食器を洗う方がよっぽど簡単です。特別な知識も集中力もいりません。誰でも「後者の方が取り掛かりやすいはずだ」と思うでしょう。

ところが、私を含め一部の人にとっては、この難易度が完全に逆転してしまっています。

実はここに、ある種の「脳の偏り」とも言える、興味深いポイントが隠れています。50代でわざわざコンテンツビジネスを学ぼうとされる方は、総じて学ぶ意欲が高く、知的な刺激を求める傾向があります。私もその一人です。しかし、その特性は時として、日常生活において「極端な不器用さ」として現れます。

私にとって、読書や勉強はもはや歯磨きと同じ「習慣」の領域にあります。新しい知識に触れることは、脳に新鮮な酸素を送り込むような快感であり、放っておいても体が本に向かいます。

一方で、食器洗いや掃除といった家事は、どれほど簡単に見えても、脳にとっては「報酬のない重労働」に感じられてしまうのです。脳が「知的なエサ」にばかり反応するよう最適化されてしまった結果、報酬の少ない日常ルーチンに対して、驚くほど無気力になってしまう……いわば、脳が「贅沢病」にかかっている状態なのです。

「難しいことはできるのに、簡単なことができない」

この一見すると矛盾した、しかし本人にとっては切実なギャップこそが、私たちが自由時間を持て余してしまう最大の正体だったのです。

本質:「体が先、脳が後」の脳科学

では、どうすればこの重い腰を上げられるのか。ここで最も重要なルールが「体が先、脳が後」という原則です。

私たちは「やる気が出たら、動こう」と考えますが、脳科学的にはこれは逆です。やる気をつかさどる脳の部位「側坐核」は、実際に体を動かし始めることでしかスイッチが入らない性質を持っています。これを「作業興奮」と呼びます。

車に例えるなら、アクセルを踏んでエンジンを回さない限り、ガソリン(やる気)が供給されないようなものです。椅子に座って「やる気が出ないなぁ」と考えている間、脳はアイドリングすらしていません。理屈で脳を説得するのは諦め、まずは物理的に体を動かすしかないのです。

脳を奇襲する「物理攻略ワザ」

「知っていても動けない」という壁を突破するために、理屈ではなく「物理」で解決する方法をいくつか提案します。

① 思考を遮断する「5秒ルール」
「あ、掃除しなきゃ」と思った瞬間、脳は5秒以内に「やらない理由」を探し始めます。「疲れているし」「明日でもいいし……」。この言い訳が始まる前に、5、4、3、2、1……とカウントダウンし、0になる前に強制的に立ち上がる。考える隙を与えずに体を動かす「脳への奇襲」です。

② 「有無を言わさず」現場へ体を運ぶ
掃除をしようと思うから重いのです。「とりあえずキッチンへ歩いていく」ことだけを目標にします。座っていたら、まず膝の上の本をどかす。立っていたら、1歩だけキッチンの方へ踏み出す。現場に着いてしまえば、脳は「せっかく来たんだから、コップ1個くらい洗うか」と勝手にモードを切り替えてくれます。

③ すでに持っている「慣性」を利用する
勉強や読書が習慣化しているなら、それを「呼び水」にします。「この章を読み終えた瞬間に、そのままの勢いでキッチンへ向かう」「勉強のタイマーが鳴った瞬間に、一つだけゴミを捨てる」。すでに動いている体の「慣性」を利用して、次の動作へ自分を放り込むイメージです。

これは「定年後の自走力」のトレーニングである

なぜ、これほどまでに「体を動かすこと」を強調するのか。それは、これが単なる家事のライフハックではないからです。

50代の会社員が定年後、個人の力で稼いでいくコンテンツビジネスの世界。そこには、あなたに指示を出す上司も、強制的に座らされるデスクもありません。自由な時間をどう使い、どう自分を動かすか。その「自走力」こそが、ビジネスの成否を分ける最大の武器になります。

「掃除は嫌いでも、学びは好き」
そんなあなたの脳は、間違いなくクリエイティブな可能性に満ちています。ただ、その脳を使いこなすための「物理的なスイッチ」を、まだ自分で押す練習が足りないだけなのです。

家事という、報酬が少なくて面倒なタスクに対して、いかに「有無を言わさず」体を動かせるか。これは、定年後の自由な世界で成功するための、最高のトレーニングになります。

さあ、この文章を読み終えたら、まずは5秒数えて立ち上がってみてください。
その一歩が、あなたの脳を「稼げる自走脳」へと変えていく第一歩になります。

この記事を書いた人|ミライジュウ

メディア関連企業の業務部長。ラジオ演出30年の経験を経て、
「50代からでも“1円を生む力”は育てられる」と信じて発信中。
毎朝4時起きでランニング・筋トレ継続中。
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