なぜ問題集から始められないのか
資格試験の勉強というと、多くの人が「テキストを最初から読み込む」ところから始めてしまいます。けれど、これは効率が悪い勉強法です。私自身、50歳を過ぎてから複数の資格に挑戦し、合格もしてきましたが、何度もうっかりテキストを読み込みすぎて時間を浪費した経験があります。
結論を先に言うと、いきなり問題集から取り組んだ方が圧倒的に効率的です。なぜなら、資格試験は「知識を理解しているか」ではなく「問題を解けるかどうか」で合否が決まるからです。
しかし多くの人は「テキストをしっかり読まないと問題なんて解けるわけがない」と思い込み、最初に安心を求めてしまう。なぜこんな現象が起きるのでしょうか。ここには心理学的な理由があります。
テキストを読むことに逃げてしまう心理
資格試験でテキストに逃げ込んでしまうのは、怠けているからではありません。心理学的に説明できる“自然な脳の動き”です。
認知的不協和
本で勉強して「よし、分かった!」と思って問題を解いたら、赤ペンでバツ。あの瞬間に胃がキュッと縮むような感覚が「認知的不協和」です。脳は「理解していたはずなのに結果は不正解」という矛盾を嫌い、そのモヤモヤを解消しようとします。そのとき一番簡単なのが「テキストを読む」こと。読むと「努力している感覚」が得られて気持ちが落ち着く。つまり、テキストは“心の胃薬”になっているのです。
処理流暢性
テキストを読むとスラスラ頭に入ってくるので「なるほど、完璧!」と気分が良くなります。でも翌朝になると、ほとんど記憶に残っていない…そんな経験はありませんか?これが「処理流暢性」の罠です。脳は「理解しやすい=覚えた」と勘違いするんです。いわば、かき氷を食べた直後に「お腹いっぱい」と錯覚するようなもの。すぐに溶けて消えるのに、満足感だけは強く残る。だから「読んだ=できる」と錯覚してしまうのです。
さらに、問題集は正誤が突きつけられるため「自分ではコントロールできない」と感じやすい。一方でテキストは自分のペースで進められるのでコントロール感を得やすい。また、テキストは「読んだページ数」「マーカーを引いた箇所」で小さな達成感が積み重なりやすい。これが即時報酬バイアスとして働き、テキストに逃げ込みやすくなるのです。
テキストは辞書、問題集こそ教科書
ここで強調したいのは、「テキストは辞書であって、教科書ではない」ということです。辞書は必要なときに引けばいいだけで、最初から最後まで熟読するものではありません。資格試験の勉強でも同じで、テキストは“問題を解くために必要になったとき”に使えば十分です。
教科書の役割を果たすのはむしろ問題集です。問題を解くことで「出題の形式に慣れる」「自分がわかっていない箇所を発見する」ことができる。資格試験はこの二点をクリアできれば合格点に届きます。
「全部理解してからでないと問題は解けない」というのは思い込みにすぎません。むしろ逆で、「問題を解いてみるから理解が深まる」のです。
私がFP2級で実践した方法
私はFP2級を受験したとき、徹底的に「問題集主軸」の勉強法を試しました。具体的には、全問題をスプレッドシートに入力し、データベース化したのです。
列の構成はこうでした。
A列:問題文
B列:自分の回答
C列:正答
D列:解答メモ(なぜ間違えたか、どう直せば解けるか)
E列:理解度(5段階で自己評価)
F列:関連メモやリンク先
1回目は全問を解いて、できなかったものにはD列に理由を書き込み、理解度を1や2に設定しました。2回目はB列を黒塗りし、再度回答して理解度を更新していく。理解度5に到達した問題はソートで非表示にします。すると画面に残るのは「まだ弱い部分」だけ。視界からノイズが消えるので、自然と弱点だけに集中できました。
理解度1の問題については、F列に自作のメモページや図解、該当テキスト解説へのリンクを貼りました。クリックすればすぐに飛べる仕組みです。まるで自分専用のデジタル辞書を作ったような感覚で、調べる時間が短縮され、理解も深まりました。
さらに驚いたのは、「1回目〇、2回目〇だったのに、3回目✕」というケースが見つかること。これは「分かったつもり」が剥がれ落ちる瞬間です。人間は一度正解できると「もう理解した」と思い込んでしまいますが、実際には定着していないことが多い。その事実をデータで突きつけられるのは、紙のノートではなかなか難しい体験でした。
もちろん紙のノートでも「間違えた理由を書く」「理解度を色分けする」といった工夫はできます。ただ、ソートで理解度5を非表示にしたり、F列のリンクから図解に飛んだりといった仕組み化は、デジタル管理だからこそ可能なこと。だからこそ、忙しい社会人にとってはスプレッドシート学習が効率的で現実的だと実感しました。
この勉強法を実践したことで、FP2級は合格できました。
この方法を心理学的に分析すると?
この方法は、単に勉強の効率が良いというだけではありません。心理学的にも「テキスト逃避」を防ぐ仕組みになっています。
まず「間違えた理由」をD列に書き残すことで、理由不明の不正解を減らせます。これによって「なぜできないのかわからない不安」が解消されます。人は理由さえわかれば失敗を受け入れやすいので、不正解そのものがストレスではなくなります。
次に「理解度を数値化する」ことで、問題を解くこと自体が報酬に変わります。点数が取れなくても「理解度が上がった」という達成感が得られる。これは即時報酬バイアスを逆手に取ったやり方です。
さらに「弱点を抽出して集中する」流れは、自分で学習をコントロールしている感覚を生みます。テキストに逃げ込む心理の背景には「問題集はコントロールできない」という思い込みがありますが、データベース化によって「どの問題をやるか自分で選べる」状態になるため、コントロール感を回復できるのです。
結論:試験日から逆算して、解けるかどうかを把握する
資格試験において大事なのは、すべてを理解することではありません。ゴールは「試験日までに解ける問題を増やすこと」、そして「解けない問題を把握しておくこと」です。
だからこそ、テキストに逃げ込むのではなく、まずは問題集から始めるべきです。テキストは必要になったときにだけ辞書として引けばいい。
「問題を解く → 間違える → 理由を明確にする → 理解度を更新する → 弱点だけ集中する」
このサイクルこそが、合格への最短ルートです。
そして、間違えた問題はあなたを攻撃する敵ではなく、「ここを攻略すれば合格できる」と教えてくれる案内人なのです。
資格試験に挑むすべての人に伝えたい。テキストを読むな。安心感に逃げるな。試験で出るのは問題集と同じ形式の問いだけです。問題集こそが教科書。テキストは辞書。これを徹底することで、効率的に合格へと近づけるのです。
まとめ
資格試験は「知識をすべて理解する競技」ではありません。限られた時間で「問題を解ける自分」に仕上げる競技です。だから、安心感や達成感に流されてテキストに逃げ込むのではなく、あえて不安と向き合いながら問題集を主軸に据えること。これが50代からの資格勉強を効率的に進める鍵です。
この記事を書いた人|ミライジュウ
メディア関連企業の業務部長。ラジオ演出30年の経験を経て、
「50代からでも“1円を生む力”は育てられる」と信じて発信中。
毎朝4時起きでランニング・筋トレ継続中。
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