「また今度にしよう」と言ってしまう私たちの“自然な感情”
「今日はちょっと忙しいから、また明日にしよう」
「いま始めても中途半端になりそうだし」
「週末にまとめてやろうと思ってるから」
こうした“また今度にしよう”の感情は、多くの人が日常で何度も経験しているものです。
そしてそれは、ブログ執筆、資格勉強、読書、運動、家計の見直し…すべてに共通して現れます。何かを始めようとするその瞬間に、ふと「今日はやめておこうかな」という感情がよぎる。それは決して意志が弱いからでも、怠けているからでもありません。むしろ人間にとって“自然な反応”です。
私自身、2017年から毎朝5kmのランニングを続けていますが、正直なところ「今日は雨だし」「仕事が立て込んでるし」といった“やらない理由”が頭をよぎる日は、今でもたくさんあります。でも、結局シューズを履いて、走り出す。なぜかというと、「気分」よりも「仕組み」や「習慣」が勝つように設計されているからです。
この記事では、そんな“また今度にしよう”の正体を探り、その感情にどう向き合えばよいのか、そして「後回しにしないための設計」とは何かを紐解いていきます。
後回しの正体は「やる気不足」ではない。5つの“壁”が行動を止めている
「行動できないのは、やる気が足りないからだ」
多くの人がそう信じています。でも、本当にそうでしょうか?
実際には、やる気があっても、行動に移せないことは日常茶飯事です。
たとえば、資格の勉強をしようと机に向かったのに、SNSを開いてしまったり、急に部屋を片付けたくなったり。やろうと思ったことが、気づけば別のことにすり替わっている。これは意志の弱さではなく、「行動を阻む見えない壁」が存在しているからです。
その壁は、主に次の5つに分けられます。
- 時間管理の壁
まとまった時間が取れない、始めるタイミングが見つからない。 - モチベーションの壁
始めても成果が見えにくく、意味が感じられなくなってくる。 - アイデアの壁
やろうとしても、何から手をつけたらいいかわからない。 - 技術的な壁
ツールの操作がわからず、思い通りに進まない。 - フィードバックの壁
誰にも見られていない感覚が、孤独感や無意味さを生む。
これらの壁は、単体ではなく複合的に絡み合っています。
たとえば、時間が確保できないとアイデアを練る余裕がなくなり、アイデアがないとモチベーションが下がる。そして書いたところで誰も読んでくれないなら、やる意味が見えなくなってしまう。
こうした状況に陥ると、「よし、やるぞ」と思っても、気づけば手が止まり、つい「また今度にしよう」と口にしてしまうのです。
つまり、後回しの本質は“怠け”ではなく、“環境設計の未整備”なのです。
あなたの中の“やる気”が問題なのではありません。問題は、やる気が活かされるだけの「設計」がまだ整っていないこと。ここに気づくことが、後回しの呪縛から抜け出す第一歩になります。
後回しを生むのは“脳の防衛本能”。私たちは長続きしないようにできている?
「やらなきゃいけないのに、なぜか始められない」
「続けたいのに、途中でやめてしまう」
こうした“後回し”の根っこにあるのは、実は脳の生存本能にあります。
私たちの脳には、「変化=リスク」とみなす古いメカニズムが備わっています。進化心理学の観点で言えば、これは太古の時代から私たちを危険から守ってきた機能です。現代において「ブログを書く」「勉強する」ことが命の危険に繋がるわけではありませんが、“未知の行動”や“負荷のかかる行動”は、脳にとってはストレスと判断されやすいのです。
その結果、脳はこうつぶやきます。
「今日はまだやらなくていい」
「また今度、もっと良いタイミングで始めよう」
この“やらない言い訳”の巧妙さは、「創造的回避(Creative Avoidance)」という心理学用語でも説明されます。やるべきことから逃れるために、あえて別の“建設的に見える行動”に走るのです。
たとえば、勉強を始める直前になって急に部屋を片付けたくなったり、ブログを書こうとしていたのにサムネイル画像の調整に時間を使い始めたり。こうした回避行動は、ただの怠慢ではなく、脳が“エネルギー消費を避け、安全圏にとどまろうとする”働きによるものです。
また、脳は“意志力”を有限の資源とみなしており、集中や判断に多くのエネルギーを消費する行動ほど、後回しにされやすくなります。
そのため、「やる気さえあればできる」という考え方は、科学的には誤りなのです。
私たちが後回しをやめたいなら、まず知っておくべきなのは、脳がそもそも“先延ばしするようにできている”という前提。だからこそ、「自分を責める」のではなく、「脳の特性に合わせて仕組みを作る」ことが必要なのです。
2017年から毎朝走っている私も、「今日はやめようか」と思う瞬間がある
私は2017年から、毎朝4時に起きて5kmのランニングを続けています。
もう何年も続いているから「習慣化された強い意志がある人」と思われるかもしれませんが、実はそうでもありません。毎朝、心の中ではこういう声が聞こえます。
「今日は雨が降りそうだからやめておこうか」
「昨日よく眠れなかったし、疲れもあるし…」
「土曜日だから、ちょっとゆっくりしてもいいんじゃないか」
人は本当に、“やらない理由”をいくらでも思いつく生き物です。
でも私は、走るための「儀式」や「環境」をあらかじめ作っておくことで、それらの声に流されないようにしています。
たとえば、シューズは前の晩に玄関に出しておく。ウェアも枕元に用意しておく。起きたらとにかく体を動かし、頭で考える前にスタートを切れるようにする。
こうした「設計」があるからこそ、気分に左右されず、淡々と走り出すことができるのです。
これは、学びや仕事にも同じことが言えます。
私は今、「証券外務員一種」の勉強をしていて、これも正直に言えば、気分が乗らない日もあります。
でも、そんなときは無理せず、「飽きたら別の学びへ」というローテーション法を採用しています。
- 飽きたらPythonのプログラミングに切り替え
- さらに飽きたら読書に移行
- それでも飽きたら、また資格勉強に戻る
すると、どれかしらには集中できて、結局1日中スキルアップに没頭できている。
このやり方は、脳が「変化を求める性質」をうまく使っていると言えるかもしれません。
だから私は、「継続は意志の問題ではない」と確信しています。
必要なのは、**感情に支配されない「習慣と仕組み」**です。そして、やる気が出るまで待つのではなく、やる気がなくても始められる環境を先に整えておく。これが、後回し癖を克服する最大のコツだと思うのです。
“がんばる”ではなく“設計する”|後回し癖を乗り越える仕組みづくり
後回しにしてしまうのは、意志が弱いからではありません。
脳の構造上、むしろ「先延ばしするのが自然」なのです。
だからこそ、必要なのは“もっとがんばること”ではなく、“がんばらなくても続けられる仕組み”を作ることです。
たとえば──
- 時間が確保できないなら、「1日の最初に15分だけ」やる時間を固定する
- モチベーションが落ちるなら、「できたこと記録」をつけて、自分の進捗を可視化する
- ネタが思いつかないなら、「アイデアの種リスト」をスマホにメモしておく
- 操作に手こずるなら、初期設定を簡単にし、テンプレートでハードルを下げる
- 反応がなくて孤独を感じるなら、小さな読者グループやstand.fmなど他のメディアを活用する
このように、「自分が後回しにしがちな場面」を先回りして設計し直すこと。
それは、まるで家の中に“つまずく段差”があったら、そこにスロープを設置するようなものです。
あなたの行動は、気合や精神論に頼る必要はありません。
むしろ、仕組みと環境によって自然に引き出されるものです。
ゼロイチ・スタジオの読者に伝えたいのは、「意志ではなく設計で変わる」という視点です。
脳の仕組みを知り、それに合わせて自分を整えていく。
それが、後回しをやめる唯一にして最も現実的な方法です。
次こそ行動したいあなたへ。
“また今度”を繰り返さないために、今日、この瞬間から一歩を踏み出せるように、まずは**「整える」ことから始めてみませんか?**
この記事を書いた人|ミライジュウ
メディア関連企業の業務部長。ラジオ演出30年の経験を経て、
「50代からでも“1円を生む力”は育てられる」と信じて発信中。
毎朝4時起きでランニング・筋トレ継続中。
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