弱さを見せて信頼を得る|なぜ「すごい人」より「隙のある人」が選ばれるのか

「何かを発信するなら、誰からも文句を言われない完璧な実績を作ってからにしよう」
そう考えて、一歩も前に進めなくなっていませんか?

実は私には、今でも思い出すと少し胸が痛む「空白の3年間」があります。3年前、意気揚々とブログを始めたものの、わずか10記事ほどで挫折してしまったのです。

「自分にはまだ、人に教えられるような専門知識が足りないんだ」
そう自分に言い聞かせ、私はペンを置き、参考書を手に取りました。そこから必死に勉強し、簿記3級、2級、FP3級、そして2級まで取得したのです。

しかし、いざ資格を引っ提げて再びパソコンの前に座った時、私は衝撃の事実に直面しました。
「……やっぱり、1行も書けない」

資格という「正解」を手に入れても、発信という「未知の荒野」に踏み出す勇気は1ミリも増えていなかったのです。今回は、この手痛い失敗から学んだ、心理学的な「影響力の正体」についてお話しします。


有能な人ほど「隙」が必要な理由

なぜ私は、資格という「盾」を揃えても動けなかったのでしょうか。その答えは、心理学者エリオット・アロンソンが1966年に提唱した「プラットフォール効果(Pratfall Effect)」という概念に隠されています。

アロンソンが行った有名な実験があります。被験者に「非常に有能な人物(クイズに92%正解する)」と「平凡な人物(30%しか正解しない)」がクイズに答える録音を聞かせました。その後、録音の最後にコーヒーをこぼすというドジを踏む場面を流したのです。

その結果、最も好感度が上がったのは、『有能な人がコーヒーをこぼしたとき』でした。逆に、平凡な人が同じミスをすると、好感度は下がってしまったのです。この実験は、完璧すぎて近寄りがたい存在が、小さな失敗を見せることで「親しみやすさ」という最大の武器を手に入れることを証明しました。当時の私は、この「親しみやすさ」という要素を完全に無視していたのです。


心理学的な視点から見る「弱さ」の力

心理学的な視点では、完璧すぎる人は周囲に「嫉妬」や「劣等感」を抱かせやすく、心理的な防衛本能を働かせてしまうと言われています。一方、自らの弱点や失敗を適切に開示することは、社会的な絆を強める強力な接着剤となります。

脆弱性(弱さ)を見せることは、相手に対して「私はあなたを威圧するつもりはありません」という安心感を与えます。私が「簿記2級・FP2級」という資格の壁を高く築けば築くほど、皮肉なことに、読者との心理的な距離は広がってしまっていたのです。人は他人の成功よりも、その裏側にある「人間らしさ」にこそ共感を抱くものです。


『影響力の武器』と『超影響力』に学ぶ信頼の戦略

名著『影響力の武器』の中には、プラットフォール効果としての「弱みを認めることで誠実さを高める戦略」が数多く記されています。たとえば「アビス・レンタカー」の「私たちは業界2位です。だからこそ一生懸命頑張ります」という広告のように、あえて欠点をさらけ出すことで、その後に続く主張の信憑性を爆発的に高める手法です。

また、メンタリストDaiGo氏の著書『超影響力』でも、自分の「悩み」や「葛藤」をさらけ出すことによる信頼構築が推奨されています。ただし、ここには重要なルールがあります。それは「有能さ」が前提にあることです。私が資格を取ったことは「信頼の土台」を作る意味では正解でした。しかし、本当に大切なのは、実績という土台の上に、あえて「人間臭いエピソード」を乗せる順番の妙だったのです。


両面提示の法則:なぜ「欠点」を言うと信じてもらえるのか

さらに、自分の失敗や弱点を語ることは、説得の心理学において「両面提示」という手法に通じます。メリットだけでなくデメリットも合わせて提示することで、情報の信憑性が一気に高まるという法則です。

例えば、あなたが「この商品は完璧です!」とだけ言う営業マンに会ったとします。あなたの脳内では「そんなに完璧なはずがない」という疑念が生じます。しかし、その営業マンが「実はこの商品、ここが少し使いにくいんです」と自ら認めると、脳内の警戒心が解け、かえってメインの機能に対する信頼性が高まります。

私がブログを書けなかった理由もここにありました。私は「完璧な自分」として正論を吐こうとしていました。しかし、読者が求めていたのは、教科書的な正解ではなく、「資格を持っていてもなお、悩み、迷いながら進む等身大の言葉」だったのです。欠点を隠すことは、実は読者の信頼を遠ざける行為だったと言えます。


自発的特徴転移:他人の失敗を語るリスク

最後に、一つだけ注意点があります。さらけ出すべきは、あくまで「自分の失敗」であるということです。心理学には**「自発的特徴転移」**という現象があります。他人の欠点や失敗を語ると、聞き手の脳内ではそのネガティブな特徴が、なぜか「話している本人(あなた)」のものとして記憶されてしまうのです。

つまり、他人の失敗をネタにすればするほど、あなた自身の評価が下がっていきます。プラットフォール効果は、自分自身の「有能さという盾」を「自分の失敗という剣」で少しだけ削るからこそ、魅力的なギャップとして機能します。この順番と対象を間違えてはいけません。


結論:あなたの「失敗」は未来の武器になる

3年前の私は、記事が書けない自分を「無能だ」と責めていました。でも、その情けない経験こそが、今こうして皆さんの前で語れる「共感の種」になっています。

資格を取ったことは無駄ではありません。それは私の「信頼の土台」になりました。でも、私を本当に自由にしてくれたのは、その資格ではなく「失敗した過去を認める勇気」でした。

完璧を目指すのは今日で終わりにしましょう。 人は、あなたの成功に拍手を送るかもしれませんが、あなたの「隙」や「弱さ」にこそ深く共感し、ついていきたいと思うのです。泥臭く、間違えながら、修正しながら進む。その過程こそが、あなただけの最も価値あるコンテンツになるのです。


参考文献:
・『超影響力』メンタリストDaiGo(著)
・『社会心理学 第10版』エリオット・アロンソン 他(著)
・『影響力の武器[第三版]』ロバート・チャルディーニ(著)

この記事を書いた人|ミライジュウ

メディア関連企業の業務部長。ラジオ演出30年の経験を経て、
「50代からでも“1円を生む力”は育てられる」と信じて発信中。
毎朝4時起きでランニング・筋トレ継続中。
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