「できない理由」を考える人と、「できる方法」を考える人。〜あなたの行動を止めている「言い訳」の正体を暴く〜

新しい企画を立ち上げるとき、あるいは目の前に高い壁が立ちはだかったとき、私たちの頭の中には瞬時に「ある思考」が浮かびます。

「でも、予算がないから無理だよ」「時間的に厳しいよね」と、できない理由を次々と並べてしまう。
そして後から、「なんで自分はいつもこうやってネガティブに考えてしまうんだろう……」と落ち込んでしまう。

もしあなたが今、そんな自分に悩んでいるなら、まずは安心してください。能力が足りないわけでも、あなたの性格が悪いわけでもありません。これは、脳の防衛本能が少し強く働いているだけなのです。

今回は、世界的な3冊の名著(『マインドセット』『7つの習慣』『嫌われる勇気』)の視点を取り入れながら、なぜ私たちが「できない理由」を考えてしまうのか、その心のメカニズムを徹底解剖します。

この記事を読み終える頃には、自分の思考のクセを優しく受け入れ、いつでも「できる方法を考えるモード」へ切り替える方法が分かっているはずです。


気がつくと「できない理由」を探してしまう心のメカニズム

私たちは何かに直面したとき、無意識のうちに脳内で問いを立てています。ついできない理由ばかりが浮かんでしまうとき、脳内の問いは常に「なぜ、これは無理なのか?」になっています。

  • よくある口癖:「でも」「だって」「前も失敗したし」「普通はあり得ない」
  • その時の心理: 失敗して傷つきたくない、現状を維持したい、責任を取りたくない

これは決して「悪いこと」ではありません。本能としては、あなたを失敗や痛みのリスクから守ろうとする「防衛策(リスクヘッジ)」なのです。優秀な人ほど、先々のリスクが見えすぎてしまい、ブレーキを踏みやすくなる傾向があります。


世界の名著が解き明かす「できない理由」の正体

なぜ私たちは、頼んでもいないのに「できない理由」を次々とひらめいてしまうのでしょうか? あなたもよく知る3冊の名著から、その構造を少し耳が痛いかもしれませんが、深く紐解いていきましょう。

『マインドセット』が教える「失敗への恐怖」

心理学者キャロル・S・ドゥエック氏の著書『マインドセット「やればできる!」の研究』では、人には2つのマインドセットがあると提唱されています。

ついできない理由を探してしまうとき、私たちの心は「硬直マインドセット」に傾いている可能性があります。これは「人間の能力や才能は生まれつき決まっていて、変わらない」と信じている状態です。

この状態のとき、失敗は「自分の能力のなさの証明」になってしまいます。だからこそ、自分のプライドや心が傷つかないよう、脳が先回りして「できない言い訳」を探し、挑戦からあなたを逃がそうとしてくれているのです。

『7つの習慣』が教える「変えられないもの」への執着

スティーブン・R・コヴィー氏の『7つの習慣』の中には、私たちの意識の向け先として「関心の輪」と「影響の輪」という概念が登場します。

できない理由を考えてしまうとき、私たちの視野は「自分にはどうしようもないこと(関心の輪)」ばかりに向いています。景気、会社のルール、上司の性格、時間が足りないこと……。これら「変えられないもの」ばかりに目を向けると、脳は「だから無理だ」という結論を導き出すしかなくなってしまいます。

『嫌われる勇気』が暴く、できない理由の「本当の目的」

アドラー心理学を解説した『嫌われる勇気』は、さらに踏み込んだ衝撃的な真実を私たちに突きつけます。アドラーは、過去のトラウマや環境が原因で今の行動が決まるという「原因論」を否定し、すべての行動には本人の「目的」があるとする「目的論」を唱えました。

これを今回のテーマに当てはめると、次のような鋭い指摘になります。

「できないから、やらないのではない。傷つきたくない(あるいは変わりたくない)という『目的』が先にあって、やらない正当な言い訳として、後から『できない理由』を作り出しているのだ」

例えば、「過去にこれで失敗したトラウマがあるからできない」と思う時。アドラー流に言えば、「もう失敗して惨めな思いをしたくない」という目的が先にあり、それを正当化するために「過去のトラウマ」という便利な材料を自分で引っ張り出してきている、ということになります。私たちは無意識のうちに、自分を守るための「免罪符」としてできない理由を必要としているのかもしれません。


「できない理由を考える自分」を責めなくていい理由

ここまで読むと、「やっぱりできない理由を考える自分はダメなんだ」と落ち込んでしまうかもしれません。しかし、そんな風に自分を責める必要はまったくありません。

ビジネスや組織、そして個人の人生において、「できない理由を考える能力」は、実は強力な「リスクマネジメント能力」です。

もし世の中が「できる方法」ばかりを考えるアクセル全開の人だけになったら、社会はリスクへの視界がゼロになり、崖に向かって全力疾走して自滅してしまいます。「いや、そこにはこういうリスク(できない理由)がありますよ」とブレーキをかけられる存在は、チームにとって絶対に不可欠なのです。

大切なのは、その能力を「やらない言い訳」として使うのではなく、「安全に進むための対策」として使うことです。


今日から脳のスイッチを「できる方法」に切り替える2つのステップ

人間の脳は放っておくとリスクを避けるようにプログラミングされています。だからこそ、責めるのではない、意識して「脳のスイッチ」を切り替えるコツを身につけましょう。

ステップ①:自分の「目的」を優しく認める

できない理由が頭に浮かんだら、一瞬立ち止まって、自分にこう問いかけてみてください。
「私は今、自分のどんな恐怖を守ろうとして『できない理由』を探しているんだろう?」

「そっか、失敗して恥をかくのが怖いんだな」「今の楽な状態を変えるのが不安なんだな」と、自分の本当の目的(恐れ)を否定せずに認めてあげるだけで、思考のガチガチした執着はフッと軽くなります。

ステップ②:魔法の接続詞「もし〜だとしたら?」を使う

脳は「無理だ」とつぶやいた瞬間に、すべての検索をストップしてしまいます。そこで、頭の中にできない理由が浮かんだら、言葉を次のように強制変換してみてください。

  • ❌ 「予算がないから無理」 ⇒ ⭕ 「もし、予算がクリアできたとしたら、何から始めたい?」
  • ❌ 「時間が足りないからできない」 ⇒ ⭕ 「もし、使える時間が15分だけだとしたら、どこまでできる?」

「もし〜だとしたら?」という仮定を挟むことで、脳の警戒ロックが解除され、クリエイティブな「できる方法」の検索エンジンが自然と回り始めます。


まとめ:あなたはいつからでも、どちらの生き方も選べる

『マインドセット』が教える成長への信頼、『7つの習慣』が教える主体性、そして『嫌われる勇気』が教える一歩を踏み出す勇気。

これらすべての名著が共通して伝えているのは、「私たちは、過去や性格に縛られる必要はなく、いつからでも、どちらの思考も選ぶことができる」ということです。

できない理由が浮かぶのは、あなたが真剣に物事を考えている証拠です。これからはその高いリスク察知能力を味方につけて、「じゃあ、どうする?」という小さな一歩に変えていきませんか?

ほんの少し脳への問いかけを変えるだけで、あなたの見える世界は今日から変わり始めます。

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