2〜3年前、ニュースやSNSでも話題になった「デジタル円」。当時は「日本もいよいよデジタル通貨を出すのか!」と騒がれたものの、最近ではあまり耳にしなくなりましたよね。
でも、だからといって構想自体が立ち消えになったわけではありません。むしろ今、着実に実証実験が進んでおり、2026年以降に制度設計を踏まえた発行が検討される段階に入っています。
ただひとつ、混乱しやすいのが「デジタル円ってPayPayとかSuicaみたいなやつでしょ?」という誤解。たしかに見た目や使い方は似ているかもしれませんが、本質的にまったく別物です。
電子マネーとどう違う?
既存のキャッシュレス決済は、あくまで「民間企業が提供するサービス」です。たとえば、PayPayや楽天ペイなどは、いわばポイントやチャージ残高をやり取りしているようなもの。一方で「デジタル円」は、日本銀行が直接発行する“法定通貨のデジタル版”です。
つまり、紙幣や硬貨とまったく同じ“円”であり、信頼性・法的効力がまったく違います。しかも、プログラム可能な通貨として、新しい制度設計や支援策とも直結する可能性を持っています。この変化は、私たちの生活にとってはもちろん、中小企業や個人事業主にとっても“見逃せない転換点”になるかもしれません。
“備えていない中小企業”に訪れるリスクとは?
デジタル円の実証実験は、2024年から「パイロットフェーズ(銀行や事業者を巻き込んだ検証)」に進んでおり、発行自体も数年以内に現実味を帯びてきています。
とはいえ、まだ一般導入は先の話。だからこそ、多くの企業が「まだ動かなくていい」と考えてしまう。しかし、ここに大きな落とし穴があります。
- 「対応できないから顧客を逃す」
- 「会計や税務が混乱する」
- 「セキュリティ事故に巻き込まれる」
といったリスクにさらされる可能性があります。特に中小企業や個人事業主は、リソースが限られているからこそ、今のうちに少しずつ備えておくことが大きな差を生みます。
今からできる「3つの備え」とは?
では、何から備えればいいのか? 中小企業が「今からできること」は、次の3つの視点に分けられます。
① 決済体制の見直し
デジタル円は、おそらくスマホやQR決済のような形で導入されます。POSレジや請求書発行システムが対応していないと、顧客からの支払いを受けられない可能性も。今からキャッシュレス対応を見直すことが第一歩です。
② 会計・税務のアップデート
デジタル通貨は、取引履歴がすべて記録されます。これが「便利」であると同時に、「見られる」ということでもあります。既存の会計ソフトや仕訳のやり方を、少しずつ見直していくタイミングです。
③ セキュリティ意識の強化
「通貨がデジタル」ということは、“盗まれる”のもデジタル。ウォレット管理、端末のセキュリティ、社内リテラシーなど、小さな工夫が命取りを防ぎます。
デジタル円対応が遅れた現場のリアルなケース
ある地方の飲食店では、PayPayや交通系ICに対応できなかったことが原因で、若年層の顧客を取りこぼす結果になりました。さらに、補助金制度がキャッシュレス対応を条件としていたこともあり、支援の申請も断念。
これと同じことが、デジタル円でも起こり得ます。例えば、政府の支援金や給付金が「デジタル円での支給のみ」に切り替わったら…? 対応できない事業者は、資金調達や売上面で取り残される可能性があるのです。
「小さな備え」が未来を変える
まだ実際にデジタル円が使えるわけではありません。だからこそ今は、「知ること」「備えること」が最大の武器になります。
特別なスキルが必要なわけではありません。まずは日頃のマネーリテラシーを高めること。簿記やFPなどの知識は、これからの時代の“共通語”のような存在になります。そして、デジタル円も含めて、世界的なDX(デジタルトランスフォーメーション)の流れに少しでも目を向けておく。
「未来の変化に適応する力」は、今この瞬間の小さな意識から生まれます。デジタル円という“きっかけ”を通じて、あなたの事業の土台も少しずつ進化させていきましょう。
この記事を書いた人|ミライジュウ
メディア関連企業の業務部長。ラジオ演出30年の経験を経て、「50代からでも“1円を生む力”は育てられる」と信じて発信中。毎朝4時起きでランニング・筋トレ継続中。
▶︎ 運営者プロフィールはこちら
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