副業はおすすめしない。定年後のために「会社員」を徹底的にやり切るべき理由

精神科医・樺沢紫苑氏のYouTubeで、起業や副業で成功するための条件が語られていました。そこで強調されていたのは、「0か100か」で考えず、会社員時代から副業として着手し、準備を整えることの重要性です。なぜなら、いきなり独立して収入をゼロにするリスクを避け、成功の確率を最大限に高める必要があるからです。

しかし、この提言を受けて、私はあえて「副業はおすすめしない」という立場を取りたいと思います。

今、私たちが優先すべきは目先の小銭を稼ぐ副業ではなく、「会社員という立場を徹底的にやり切ること」ではないでしょうか。

50代、若手と同じ土俵で戦うことの限界

特にIT業界やクリエイティブの世界では顕著ですが、50代になっても若手と肩を並べ、最新技術の習得や長時間労働で勝負し続けるのは、あまりに過酷な戦略です。

技術の進化は凄まじく、かつて得意だったスキルもすぐに塗り替えられます。加齢とともに目は霞み、体力的にも無理が利かなくなる。この土俵で、20代、30代と同じ熱量で戦い続けるのは、現実的ではありません。

だからこそ、会社員としてのキャリアの後半戦は、現場のプレーヤーから「管理職」へとシフトし、チームを束ねる経験を積むべきなのです。人を動かし、組織をマネジメントする。この経験こそが、やがて来る定年後の生活において、他の誰にも真似できない強力な武器になると私は信じています。

管理職になって初めて見える「世界の仕組み」

私は30年間、ラジオディレクターとして現場の第一線で働いてきました。その後、50代で現場を離れて業務部長となり、現在は収支管理やフリーランスとの契約実務にも携わっています。

管理職になって初めて、会社側の事情というものを詳しく知ることになりました。そこで「だからあの時、会社はあのような判断をしたのか!」と合点がいくことがあまりにも多かったのです。若手やフリーランスでは決して立ち入ることができない領域、つまり経営判断の裏側や、組織を維持するための複雑な力学。そこに触れたとき、バラバラだった世の中の仕組みが、一本の線で繋がっていく感覚を覚えました。

この「組織の力学」と「実務の苦労」の両面を理解していることこそが、知的な大人の武器です。この視点は、会社という組織の中で責任ある立場を全うしなければ、決して手に入りません。

現場と管理、両面を見てきたからこそ言える「フリーの過酷さ」

制作会社のディレクター時代、周りには多くのフリーランスがいましたが、皆、仕事が無くならないようにと文字通り必死でした。彼らの才能を間近に見る一方で、その不安定な立場も痛いほど感じてきました。

発注する側の視点に立って改めて思うのは、「フリーランスとして生き抜くことは、想像を絶するほど大変だ」ということです。

フリーには厚生年金もなければ、社会保険の会社負担もありません。自分が動けなくなれば、その瞬間に収入は途絶えます。管理職として収支の現実や契約のシビアさを見れば見るほど、会社員として雇用を守られ、チームで仕事をする仕組みがいかに強固なセーフティネットであるかを痛感します。

「今の仕事に全力投球できないなら、フリーランスになってもダメだ」
これは、組織の現実と個人の発信、その両方を1年間必死に両立させてきた私の、偽らざる実感です。この「基本」を疎かにして、外の世界で生き残ることはできません。

「信用」の蓄積には時間がかかる。だから今すぐ始める。

では、何を準備すべきか。私は「情報発信」に力を注ぐべきだと考えます。ただし、それは定年後になってから始めるものではありません。管理職として働く50代の「今」から、コツコツと始めておくことが不可欠です。

Googleの検索エンジンにおいても、ブログがクローラーに見つけられ、正当に評価されるまでには最低でも1〜2年はかかると言われています。ネットの世界における「信用」とは、一朝一夕で築けるものではなく、時間の積み重ねそのものなのです。情報発信には膨大な時間がかかります。だからこそ、管理職として効率的に仕事をこなし、定時で帰る。そして確保した自分の時間を、将来のための学びと発信に充てるのです。

これまでの長いキャリアで培った実務経験。そこに、読書や日々の行動から得たインプットを加え、さらにAIなどの最新情報を掛け合わせる。そうして紡ぎ出された独自の視点を発信し続けることで、自分をハブとした「コミュニティ」を作ること。これが私の理想とする姿です。私は10年近く毎朝のランニングを欠かさず、この1年間はブログの毎日更新を続けてきました。10年のランニング習慣よりも、毎日の情報発信の方が遥かに大変ですが、この積み重ねこそが定年後の自分を助ける唯一の手段になります。

結論:会社員を「出口戦略」として使い倒せ

定年を迎えれば、収入は半分、さらに半分へと減っていきます。その現実に怯えるのではなく、今いる場所を「未来のための最高の訓練場」と定義し直してみてください。

今の仕事に全力投球し、管理職として組織の仕組みを深く理解する。その傍らで、他人に左右される時間を削り、今日から一歩ずつ情報発信という名の「信用」を貯金していく。

会社員をしっかりとやり切った人だけが、定年という節目を「終わりの始まり」ではなく、「本当の自由へのスタートライン」に変えることができるのです。

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