「毎日朝から晩までメール返信やチャットに追われて、自分のやりたい仕事が一切進まない……」
「特別大きなタスクがあるわけではないのに、なぜかいつも時間に追われて疲弊している……」
そんな悩みを抱えてはいませんか?
実は、あなたが「忙しい」と感じている原因は、実際の仕事の量やあなたの能力・スキルの問題ではないかもしれません。
脳のメカニズムを活用した人材開発や睡眠外来を手掛ける作業療法士・菅原洋平さんによると、その疲れや多忙感の根本原因は「仕事の主導権を誰が握っているか」にあるといいます。
今回は、仕事に振り回される状態から抜け出し、自分らしくサクサク業務を進めるためのキーワード「アクション思考」について、脳科学の視点から分かりやすく解説します。
「忙しいのに仕事が進まない」の正体はリアクション中毒
私たちの日常における仕事は、大きく分けて次の2つに分類できます。
・アクション(主体的な行動):自分で「こう進めよう」と予測を立て、結果を見ながら修正して進める仕事
・リアクション(受動的な行動):メールやチャットの返信、急な電話、上司や部下からの問い合わせ対応など、突発的な出来事に反応する仕事
毎日クタクタになっているのに自分の仕事が終わらない人は、仕事時間の大部分が「リアクション」で埋め尽くされている可能性が高いのです。
人間の脳は、本質的に「予測」を得意とする臓器です。「過去の経験からきっとこうなるだろう」と予測を立て、実際に動いた結果との差(ギャップ)を感じて修正するプロセスが得意であり、このとき脳は生き生きと機能します。
しかし、他人の動きに反応するだけの「リアクション」ばかりが続くとどうなるでしょうか?
いつ届くか分からないメールやチャット、急な依頼など、「予測できていない事態」に対応するたびに、脳は莫大なエネルギーを消費します。
結果として、タスクの絶対量が多くなくても脳が疲弊し、「忙しいのに仕事が進んでいない」という強い「多忙感」に苛まれることになるのです。
チーム全体を疲弊させる「リアクションの連鎖」
近年、SlackやTeamsなどのチャットツールやプロジェクト管理ツールの普及により、リアルタイムでの情報共有がとても便利になりました。
しかし、これが裏目に出るケースが増加しています。
「進捗はどうですか?」「この件、大丈夫ですか?」といった確認メッセージが行き交い、それに全員が即座に返信する――。一見するとスムーズな連携に見えますが、これは職場全体が「リアクションの連鎖」に陥っているシグナルです。
誰かが発した不確定なリアクションに対して、別の誰かがリアクションで返す。この連鎖が続くと、メンバー全員が自分の仕事の主導権を奪われ、職場全体に慢性的な疲労感が漂うようになってしまいます。
相手の脳が「予測しやすい」コミュニケーションをする
受動的な「リアクション」を減らし、主体的な「アクション」を増やすための第一歩は、自分自身が発信する言葉を見直すことです。
一見丁寧に見える言葉遣いが、実は相手の脳に「余計な判断(リアクション)」を強いていることがあります。
・NGな例:「お時間のある際にご確認いただき、ご返信ください」
・OKな例:「〇日(木)の15時までにご返信をお願いいたします」
・NGな例:「本日、少しお話しできるお手すきの時間はありますか?」
・OKな例:「本日14時から15分ほどお電話したいのですが、ご都合はいかがでしょうか?」
「お時間のあるときに」と言われると、受け取った側は「いつまでに返せばいいのだろう?」と考えるコストが発生します。
あらかじめ期限や日時、自分の意思を明確に提示(=YES/NOで答えられる形式に)することで、相手の脳も次の予測が立てやすくなり、結果としてお互いの不必要なリアクションを大幅に削減できます。
「正解探し」をやめて、まず動く(探索行動)
仕事でリアクションが増えてしまう人の共通点として、「絶対に間違えたくない」という意識が強すぎる点が挙げられます。
・メールの文章1つ書くために「正しいビジネスマナー」を検索し続ける
・企画書を書く前に、参考資料を延々と集め続ける
このように行動する前に答えを探そうとする行為を、菅原さんは「正解探し」と呼びます。
脳が本来持っている「予測して、動いて、修正する」という学習機能は、実際に自分が行動を起こしたときにしか働きません。
事前にどれだけ情報を集めても、自分で動かなければ「次はこうすればいい」という実践的な感覚(予測の更新)は育たないのです。
まずは未完成でも完璧でなくてもいいので、「自分なりの予測を立ててまず動く(探索行動)」ことを意識してみましょう。
AIやツールの「使う順番」を変える
最近では、業務効率化のためにChatGPTをはじめとする生成AIを活用する人が増えています。しかし、ここにも注意点があります。
最初からAIに「正解の答え」を作らせてそのまま使うと、自分の脳は一切「予測と修正」を行わないため、思考のプロセスが残らなくなります。その結果、想定外のトラブルが起きたときに自分で軌道修正ができなくなってしまうのです。
AIを活用する際は、次の順番を意識してみてください。
- まず自分が考える(探索行動):仮説やアイデア、文章のタタキ台を自力で作る
- AIを相談相手にする(利用行動):「この考え方に抜け漏れはない?」「別の視点はある?」とAIに問いかける
AIを「正解を出してくれる魔法の箱」ではなく、「自分の思考を深めるための壁打ち相手」として使うことで、脳の「アクション思考」を鍛えながら、格段に質の高いアウトプットを生み出すことができます。
まとめ:仕事の「主導権」を自分に取り戻そう
毎日仕事に追われてぐったりしてしまう原因は、作業量の多さではなく、他者の都合に振り回される「リアクション中心の働き方」にありました。
・相手が「YES/NO」で答えられる具体的な提案をする
・完璧な正解を探す前に、まず自分で予測を立てて動いてみる
・AIやツールは「答え合わせ」ではなく「思考の壁打ち」として使う
これらを意識するだけで、あなたの脳の疲労感は劇的に軽くなり、自分のペースで仕事を進められる快感を取り戻せるはずです。
「今日も誰かの対応だけで終わってしまった……」と感じている方は、ぜひ明日から1つでも「アクション思考」を取り入れてみてくださいね。

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