「願えば叶う」か「願うと叶わない」か。どっちなんだ!――成功のブレーキを外す『賢い降参』のすすめ

相反する二つの教えの狭間で

自己啓発の世界に足を踏み入れると、必ずと言っていいほど二つの巨大な壁にぶつかります。

一方は、ナポレオン・ヒルの『思考は現実化する』に代表される「強烈に願え、そうすれば叶う」という教え。もう一方は、哲学者アラン・ワッツや仏教的な視点が説く「願う(執着する)のをやめなさい、そうすれば手に入る」という教えです。

「どっちを信じればいいんだ!」と叫びたくなりませんか?
必死に願えば「執着だ」と言われ、手放そうとすれば「情熱が足りない」と言われる。しかし、実はこの二つは相反するものではなく、一つの真理を両側から見ていただけだったのです。

今日は、この矛盾を解き明かし、最も楽に、そして確実に人生を好転させる「第3の道」についてお話しします。

ナポレオン・ヒルが教える「脳のナビゲーション機能」

まず、ナポレオン・ヒルの「思考は現実化する」という考え方は、現代でいう脳科学的なアプローチです。私たちの脳にはRAS(網様体賦活系)というフィルター機能があります。

例えば、「赤い車が欲しい」と思った瞬間に、街中で赤い車ばかりが目に付くようになる。あれがRASの働きです。ヒルが説く「明確な目標」や「燃えるような願望」は、この脳のフィルターを書き換え、チャンスを捉えるようになります。

目的地を入力しなければ、車はどこにも辿り着けません。その意味で、「願う(意図する)」ことは、人生のハンドルを握る上での絶対条件だと言えます。

アラン・ワッツが警告する「逆の法則」の罠

しかし、ここからが落とし穴です。
多くの人が「願っているのに叶わない」のはなぜか。ここでアラン・ワッツの「逆の法則」が登場します。

ワッツは、「ポジティブな経験を追い求めること自体がネガティブな経験(自分は今それを持っていないという欠乏感の確認)になる」と説きました。

「お金持ちになりたい!」と必死に願うとき、心の底では何が起きているでしょうか?
実は「私は今、惨めなほどお金がない!」というメッセージを自分自身に強力に刷り込んでいるのです。この「欠乏感」をベースにした願いは、心に強い緊張と力みを生みます。

溺れている人が必死に水面を叩くほど沈んでいくように、執着という力みは、本来スムーズに進むはずの現実を停滞させてしまいます。これが「願うと叶わない」の正体です。

稲盛和夫氏の「足るを知る」という魔法

この「意図(ヒル)」と「脱力(ワッツ)」を繋ぐミッシングリンクこそが、日本を代表する経営者・稲盛和夫氏が大切にしていた「足るを知る」という心です。

稲盛氏は「ど真剣に生きる」一方で、謙虚さと感謝を忘れませんでした。
「足るを知る」とは、現状に甘んじることではなく、「今、この瞬間に与えられているものに満足し、感謝の土台に立つ」ことです。

土台が「感謝(すでにある)」であれば、そこから生まれる願いは「悲鳴」ではなく「健全な意図」に変わります。「今も幸せだけど、こうなったらもっと素晴らしいよね」という軽やかなエネルギーです。この状態になると、ワッツの言う「逆の法則」は発動しなくなります。

「もう無理だ」という降参の美学

もし今、あなたが頑張って、頑張って、それでも結果が出なくて「もう無理だ……」と絶望しているなら。実はそこが最大のチャンスかもしれません。

「もう無理だ」と白旗を上げることは、スピリチュアルな視点で見れば、自分の小さなエゴ(自分の力だけで何とかしようとする傲慢さ)を手放す儀式です。

「もういいや、なるようになれ」と投げ出した瞬間に、状況が好転した経験はありませんか?
それは、あなたがガチガチに握りしめていたハンドルを放したことで、人生という大きな流れ(運やタイミング)が動き出した証拠です。

「今は無理」と認めることが、逆説的に「逆の法則」から抜け出す最短ルートになるのです。

自分を信じて「ほどほど」に歩む

結局、願えば叶うのか、願うと叶わないのか。
その答えは、「目的地をセットしたら、あとはほどほどに歩く」に尽きます。

  • ナポレオン・ヒル流: 自分の望みを明確にする(ナビの設定)。
  • アラン・ワッツ流: 「叶わなくても今も幸せだ」と執着を手放す(ブレーキ解除)。
  • 稲盛和夫流: 今日一日、目の前のことに感謝してベストを尽くす(足元の確認)。

このバランスが取れた時、私たちは「思いが強すぎて成功しなそうな人」から、「なぜかスルスルと上手くいってしまう人」へと変わります。目的地さえ見失わなければ、力を抜いた瞬間に、ふわりと目的地へ運んでくれる追い風が吹き始めるはずです。


あなたの「ブレーキ」を外すための一歩

もし今、あなたが「頑張っているのに現実が変わらない」と感じているなら、一度だけこのワークを試してみてください。

  1. 紙を一枚用意し、左側に「今、絶対に叶えたいこと」を一つ書く(ヒルの意図)
  2. 右側に「もしそれが一生叶わなかったとしても、私は今これだけのものを持っている」という感謝リストを3つ書く(ワッツの脱力・稲盛氏の足るを知る)

「叶わなくても大丈夫」と思えたとき、あなたの願いから「毒(執着)」が抜け、本当の現実化が始まります。

まずは今日、あなたが既に持っている「3つの幸せ」をコメント欄やノートに書き出すことから始めてみませんか?

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