PER・PBRって結局なに?|投資初心者が知識を“使える判断軸”に変える考え方

PERやPBRって、聞いたことはあるけど…

最近、YouTubeやSNSで「この会社、PBR1倍割れてるから狙い目だよね」なんて会話を目にすることが増えてきました。
田端信太郎さんや堀江貴文さんといった実業家たちがよく使う用語、PER・PBR・ROE。耳慣れない言葉ではないけれど、いざ「それってどういう意味?」と聞かれたら、ちゃんと答えられますか?

私はファイナンシャルプランナー(FP)の資格を持っているので、試験でこれらの指標には一通り触れてきました。でも、実際に「どの株が良いかを判断するときに、この指標をどう使えばいいのか?」と考えると、正直まだ曖昧なところもあります。

「なんとなく割安」「PERが低いとお得」──そんなフレーズだけが先行してしまい、その数字が何を意味していて、なぜ大事なのかをちゃんと理解していないままの状態。
実は、これこそが多くの投資初心者が共通して抱える“知ってるけど使えない”問題なのかもしれません。


知っているだけでは意味がない|PER・PBR・ROEは“使ってこそ”の指標

投資の世界では、「知っている」と「使える」の間に大きな壁があります。
PER(株価収益率)もPBR(株価純資産倍率)もROE(自己資本利益率)も、知識としては比較的早い段階で学びます。実際、ファイナンシャルプランナーの試験でも基礎として出題されるので、言葉だけなら多くの人が「聞いたことがある」状態になっています。

しかし問題は、その次です。

  • PERが15倍って、安いの?高いの?
  • PBRが1倍割れだと、なんで割安と言えるの?
  • ROEが高いと良い会社なのか?でもなぜ?

こうした疑問に、実際に自分の言葉で答えられる人は少ない。
なぜなら、それぞれの指標が“何を測る指標なのか”という目的を知らないまま、数字だけを表面的に扱ってしまっているからです。

そしてこのまま進むとどうなるか。
「数字を見ても意味がわからない」→「感覚で銘柄を選ぶ」→「投資がギャンブル化する」という典型的な流れに入ってしまいます。

加えて、「この指標さえ見れば安心」という過信もまた危険です。
PERが低いからといって必ずしも良い銘柄とは限らない。たとえば、その企業が業績不振で株価が下がりすぎているだけかもしれません。
逆にPERが高い成長株は、一見割高に見えても、将来の利益拡大を織り込んでいるだけのケースもあります。

つまり、投資指標は“相対的な目安”であり、他の要素と組み合わせて使うべきツールなのです。

ここで改めて問い直したいのは、「なぜ私たちはこれらの数字を使うのか?」ということ。
本質は、企業を“数字で見える化”するため。そしてその数字を通して、価値ある企業かどうかを見抜く力をつけること。

PERやPBR、ROEは、そのための入り口に過ぎません。知っているだけでは不十分。だからこそ、投資の基礎指標として語られるこれらの数字を、実際に“使ってみる”ことが必要なのです。

PER・PBR・ROEの本当の意味|何を測り、どんな投資判断に使うのか?

ではここで、改めて3つの指標の意味と役割を整理しておきましょう。
知識としては聞いたことがあるかもしれませんが、ここでのポイントは**「何を測るための指標か」**という“目的の明確化”です。


PER(株価収益率)

=株価 ÷ 1株当たりの利益(EPS)

企業の利益に対して、現在の株価が何倍かを示す指標です。
たとえばPER15倍なら、「現在の利益水準が続けば15年で株価を回収できる」といった意味合いになります。
バフェット氏が「PER15倍以下の企業」を好む理由は、利益に対して株価が割安である、つまり**“投資効率が良い”可能性が高い**からです。


PBR(株価純資産倍率)

=株価 ÷ 1株当たり純資産(BPS)

企業が解散したときの資産価値と比較して、現在の株価がどれくらい高いかを示します。
PBRが1倍以下なら、仮に会社をたたんで資産を分配しても、今の株価以上の価値がある可能性がある、という見方ができます。
これは「株価が資産価値以下」という意味での“割安性”です。


ROE(自己資本利益率)

=当期純利益 ÷ 自己資本

株主が出資したお金に対して、どれだけ効率的に利益を出しているかを示す指標です。
ROEが高ければ高いほど、少ない資本で大きな利益を生み出している効率の良い企業だと評価されます。


これら3つの指標は、単独で見るよりも組み合わせて判断することが大切です。

  • PERが低くてROEが高い ⇒ 利益効率の良い割安株かも?
  • PBRが1倍を下回っていて、なおかつROEも悪くない ⇒ 資産価値に対してお得な企業?
  • 逆に、PERが高くROEが低い ⇒ 過剰評価されている可能性も

数字には常に「なぜその数値になっているのか?」という背景があります。
だからこそ、指標は“使ってこそ”。次のブロックでは、投資の世界でこれらの指標がどう活かされているのか、バフェット氏の視点をヒントに深掘りしてみます。

バフェットがPER15倍以下に注目する理由と、私たちが学ぶべきこと

「PER15倍以下の企業に注目している」
この言葉は、投資界の巨人ウォーレン・バフェット氏が長年語ってきた信念の一つです。
なぜ15倍なのか? これは、彼の投資スタイル──つまり**“良い会社を、適正より安く買って長く持つ”という価値投資の考え方**に深く根ざしています。

たとえばPERが30倍の企業があるとします。
これは「会社が1年間に出す利益の30年分の金額」で、今の株価がついているという意味です。
言い換えると、会社が毎年同じだけ利益を出し続けたとして、30年かけてようやく投資したお金を回収できるというイメージになります。

たとえば──
あなたが1株3,000円の会社の株を買ったとして、その会社が1年間に1株あたり100円の利益を出しているとします。
3,000円 ÷ 100円 = PER30倍。
この場合、毎年100円ずつ“稼ぎ”が出て、それがあなたの投資にとっての「回収」だと考えるなら、30年経ってようやく3,000円分の価値を取り戻す、という計算です。

この回収年数が15年くらいまでであれば、「適正な価格」「わりと割安」と判断できるラインになるのです。
しかも、これは“現状維持”の前提なので、企業が成長し、利益が増えればもっと早く投資を回収できるという計算になります。

バフェット氏は、これを“安全域(margin of safety)”と呼びます。
万が一成長が期待通りにならなくても、利益の水準だけである程度の回収が見込める安心ライン。それが「PER15倍前後」なのです。

彼は決してPER至上主義ではありません。Appleのような高PER銘柄にも投資しています。
でもそれは、長期的な利益成長が非常に確からしい場合に限られた例外であり、基本姿勢としては「シンプルに儲かる良い会社を、過剰に評価されていない価格で買う」ことを徹底しています。

この考え方は、私たち個人投資家にとっても非常に実用的です。
PERやPBR、ROEといった指標を使う目的は、「数字で企業の価値を翻訳すること」。
たとえば──


● 初心者におすすめの活用ステップ:

  1. PERとPBRをセットで見る
     → 株価が利益・資産に対してどの程度の水準かをざっくり掴める
     (例:PER10倍・PBR0.8倍なら、利益も資産も割に合っているかも?)
  2. ROEで企業の“稼ぐ力”をチェックする
     → ROEが高い企業は、自己資本を有効活用している効率的な企業の可能性
     (例:PBRが高くてもROEも高ければ、成長企業として期待されているかも?)
  3. 業種ごとの違いを知っておく
     → 同じPERでも、小売業とIT企業では“普通”のラインが全く違う。
     (成長業種ならPER30倍でも高すぎるとは限らない)
  4. 一つの指標に頼らず、複数を組み合わせる習慣をつける
     → PERは割安でも、利益が右肩下がりの企業なら将来性に不安。
     → PBRが低くても、資産が不良債権だったら意味がない。
     → ROEが高くても、一時的な要因で跳ねているだけかもしれない。

投資指標は「当てるための数字」ではありません。
むしろ、企業の価値を“見える化”するための翻訳ツールです。
数字を通して企業と会話する。その視点さえあれば、投資の世界はギャンブルではなく、自分で判断し、納得して選ぶプロセスへと変わります。

これは、株式投資に限らず、50代からのキャリア設計や資産形成にも通じる考え方です。
PER15倍は、単なる“数字の基準”ではなく、「どう判断し、どう選ぶか」の姿勢そのものを表しているのかもしれません。

投資は「数字を使う言語」|指標を知るだけで終わらせない習慣を

PER、PBR、ROE──どれも、投資の入門書やニュースで何度も目にする言葉です。
でも、いざ実際に銘柄を選ぶ場面では、「なんとなく知っているけど、判断に使えない」という人が少なくありません。
実はそれこそが、数字を“知識のまま放置”してしまっている状態です。

私たちが目指すべきは、「知っている」から「使っている」への変化です。
つまり、数字を見たときに、それが何を意味していて、自分にとってどう判断材料になるのかを“自分の言葉で説明できる”状態を目指すということ。
これは、投資における「主体性」の第一歩です。

PERは、その企業の“利益と株価のバランス”を表し、
PBRは、“会社の資産と株価の関係”を表し、
ROEは、“株主から預かったお金でどれだけ利益を出しているか”を示す。

この3つを組み合わせて見ていくことで、私たちは企業を「感覚」ではなく「数値」で理解できるようになります。
数字は決して“味気ないもの”ではなく、むしろ企業と対話するための言語です。
これを使いこなす力こそが、投資における大きな武器になります。

そして何より、50代からの投資やキャリア設計では、大きく当てるよりも「納得して選ぶこと」のほうがはるかに重要です。
そのためには、「なんとなく良さそう」で投資するのではなく、「この数字がこうだから、こう判断した」と言える“自分軸”を持つことが必要です。

PERが低いから、PBRが1倍割れだから、ROEが高いから──
その理由を自分の中で噛み砕き、「だから買おう」「だから今はやめておこう」と判断できるようになったとき、
はじめて投資は、自分の人生のために役立つ“意思決定の道具”になります。

知識を、使える言葉へ。
そして、数字を、未来を選ぶ基準へ。

今日からあなたも、PER・PBR・ROEを“読める人”から“使える人”へ、一歩踏み出してみませんか?

この記事を書いた人|ミライジュウ
メディア関連企業の業務部長。ラジオ演出30年の経験を経て、
「50代からでも“1円を生む力”は育てられる」と信じて発信中。
毎朝4時起きでランニング・筋トレ継続中。
▶︎ 運営者プロフィールはこちら

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