「教える力」で稼げる時代へ。経験を“価値”に変える50代の学び方

「会社での経験」は、個人で稼ぐ力になるのか?

50代という節目を迎えると、「このまま会社人生を続けるだけでいいのだろうか?」という不安が頭をよぎるようになります。役職もキャリアも一通り経験してきた。人並み以上に部下を育て、業務もマネジメントしてきた。それなりに評価もされてきた——にもかかわらず、「じゃあ、自分ひとりの力で稼げますか?」と問われたとき、戸惑ってしまう。そんな現実に直面している人は少なくありません。

会社という組織の中では、私たちは“看板”という強力な後ろ盾を持っています。その肩書きによって人は動き、発言にも重みが乗ります。しかし一歩外に出た瞬間、肩書きも評価も意味を持たなくなり、自分という人間そのものが問われます。そのときに改めて突きつけられるのが、「あなたは何ができる人なのか?」という問いです。

近年、インターネットやSNS、動画配信やオンライン講座の普及によって、誰でも自分の知識や経験を“価値”として発信できる時代になりました。noteやVoicy、UdemyやYouTubeといった媒体では、「誰かに何かを教えること」そのものが商品になり、お金を生む仕組みが整いつつあります。そしてその内容は、決して特別なノウハウや資格だけではありません。むしろ、「普通の人が現場で積み重ねてきた経験」こそが、リアルで実用的だと支持されているのです。

つまり、これまで会社で積んできた経験を、「誰かの役に立つ知識」として伝えられるようになれば、それはそのまま“稼ぐ力”へとつながります。そしてそのカギとなるのが、あなたの中にすでにある「教える力」なのです。問題は、それにまだ自分自身が気づいていないだけかもしれません。

「教える力」はあるのに、“価値化”されないまま眠っている

「人に教えることならできる。でも、それでお金を稼ぐなんて想像がつかない」——
そんなふうに感じている50代の会社員は、意外なほど多いものです。実際、部下の育成や業務指導は何年もしてきた。若手に声をかけ、失敗のフォローもしてきた。マネジメントの一環として「教える」ことは日常的に行ってきたはずです。

では、なぜその“教える力”が、社外に出た途端に通用しなくなるのでしょうか?
理由のひとつは、「教える内容が“社内向け”に最適化されている」ことにあります。会社の文化やルール、文脈の中で成立していた説明や指導は、それを知らない人には伝わりにくい。つまり、自分では“分かりやすく教えているつもり”でも、外の世界では「何を言っているのか分からない」と思われてしまうのです。

もうひとつの理由は、教えることそのものを「商品にする」という発想がないまま、これまでの人生を積み重ねてきたことです。社内での評価は、「うまく回している」「トラブルを防いでいる」などの定性的なものであり、それが“価値として誰かにお金を払ってもらう行為”とつながるとは、なかなか考えづらいのも無理はありません。

しかし今の時代、自分の知識や経験をオンラインで発信し、「役立った」と感じた人から信頼を得ることができれば、そこから有料セミナーや講座、コンサル、電子書籍販売などに展開することは可能です。実際に、多くの人が「元会社員」や「元上司」といった肩書きを武器にしながら、教える力を収益化しています。

問題は、その“翻訳力”が社内ではほとんど養われないという点です。
あなたの経験は、他人から見れば「ありがたいヒント」かもしれないのに、本人は「こんなこと誰でも知ってる」と思い込んでいる——。このギャップこそが、“教える力”が価値にならない最大の壁です。

裏を返せば、適切な視点で振り返り、相手目線で言語化しなおすことができれば、その力は確実に価値化できます。経験を持っていながら動けない人の多くは、スキルの不足ではなく、「構造の理解」と「気づき」が足りていないだけなのです。

経験を“教える価値”に変えた人たちの共通点

「経験を振り返ることで、教える力が育つ」と言われても、まだピンとこないかもしれません。
そこで今回は、実際に「経験を価値に変えた人たち」の共通点を通じて、その可能性を具体的に感じてもらいたいと思います。

たとえば、ある元営業マネジャーの男性。彼は長年、部下の育成と営業同行を担当していました。定年後、「今さら新しいことを学ぶのもなあ」と悩んでいたものの、自分が当たり前のようにやってきた「新人への商談同行」や「提案書の添削」を、noteに書いてみたのです。「営業初心者に伝えたい“提案の型”」というタイトルで始めたところ、意外なほど反応があり、その後、若手営業向けの個別アドバイスの相談が来るようになりました。

何がすごいのかというと、彼が新しいノウハウを持っていたわけではないということです。
むしろ、20年以上やってきた「当たり前のこと」を、丁寧に言語化して伝えただけ。
それでも読み手にとっては、「現場経験に裏打ちされた本音のアドバイス」として、強い信頼を生んだのです。

もうひとつ、私が直接見たケースでは、元人事担当の女性が、自分の面接官としての経験をもとに「中高年がやりがちなNG回答」「聞かれたときに詰まってはいけない質問集」といった内容をブログにまとめたところ、そこから講座やキャリア相談に発展していきました。

これらに共通していたのは、以下の3つの流れです:

  1. 自分の経験を「振り返る」ことから始めた
  2. 他者に伝えるとき、相手目線で「言葉を選び直した」
  3. 完璧でなくても「まず出してみる」ことでフィードバックを受け、改善していった

つまり、「教える力」は最初から“完成された商品”である必要はないのです。
むしろ、あなたの経験を試作品として発信することで、相手との対話が生まれ、その中で“教える内容”が磨かれていきます。

完璧に整えるよりも、まず「何を教えられるか?」を、他者とのやり取りの中で少しずつ育てていく。
この発想こそが、「稼げる教える力」の育て方なのです。

あなたの経験は「眠れる資産」だ。教える力を今こそ掘り起こそう

ここまでお読みいただいて、もしかしたら「自分にも教えられることがあるかもしれない」と感じ始めた方もいるかもしれません。
その直感は、まさに「これからの稼ぐ力」の原石です。

私たち50代は、会社の中で何十年もかけて、無数の経験を積み重ねてきました。
クレーム対応、部下育成、予算調整、提案書づくり——それぞれは当たり前のようにこなしてきたことかもしれませんが、その“当たり前”が、これからの時代に価値を持つのです。

では、今すぐ何をすればよいのでしょうか?

まず最初にやるべきことは、「振り返る時間」をとることです。
1日15分でも構いません。スマホのメモアプリやノートに、自分がこれまで関わった仕事の中で、「これは人に説明できるな」と思えることを書き出してみてください。
難しい理論や肩書きは必要ありません。大切なのは、自分自身がその体験から「何を学んだか」「何がポイントだったか」を言葉にすることです。

次に、それを誰に届けたいのかを考えてみましょう。
同じ経験でも、「部下に教えた話」を、「新人社会人向け」にするのか、「副業を始めた同世代」にするのかで、伝え方はまるで変わってきます。
ここが「教える力の価値化」において、最も大切な“翻訳の力”です。

そして、完璧を求めず、まずは小さな形で出してみること
noteで記事を書くでもいい、友人に話してみるでもいい。誰かの反応が返ってきたとき、あなたの中の“教える力”が目を覚まし始めます。

最後に、忘れてはならないのが、「振り返る→気づく→伝える→反応を受け取る」という経験学習のサイクルを繰り返すこと。
それはつまり、「教える力を育てる」というよりも、自分自身を育て直すプロセスでもあるのです。

50代からの人生において、「教える力」は間違いなくあなたの武器になります。
そして、それはあなたの“これまで”に、すでに眠っています。
その力を掘り起こす旅を、今日から始めてみませんか?

この記事を書いた人|ミライジュウ
メディア関連企業の業務部長。ラジオ演出30年の経験を経て、
「50代からでも“1円を生む力”は育てられる」と信じて発信中。
毎朝4時起きでランニング・筋トレ継続中。
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