50代は「着陸」ではなく「離陸」のとき|人生100年時代の戦略的フルスロットル論

50代になると、職場の空気が少しずつ変わってきます。
誰かが口に出すわけではないのに、
「定年まで、いかに波風を立てずに終えるか」
そんな共通認識が、静かに共有され始める。

いわば、人生の着陸態勢。
エンジンの出力を絞り、機首を下げ、
余生という駐機場へ向かう準備を始める空気です。

ですが、私はそのスロットルレバーに手をかけていません。
むしろ今、人生で一番強く、アクセルを踏み込んでいます。

50代は減速の時期ではない。
本当の意味での「離陸準備フェーズ」だと考えているからです。

人生100年時代に必要なのは「理論」より「実装」

リンダ・グラットンの名著『LIFE SHIFT(ライフ・シフト)』を読んだことがある方も多いでしょう。
人生100年時代、60歳引退モデルはすでに崩壊している。
これからは学び直し(リスキリング)が不可欠だ。

この指摘は正しく、反論の余地はありません。

ただ、現場で働き続けている人間として読み終えたとき、
私は一つの違和感を覚えました。

この本には、人生全体を俯瞰する「地図」は描かれている。
けれど、その地図を手にした50代が、
明日の朝からどう歩き出せばいいのかという「歩き方」までは、ほとんど描かれていない。

平日は会議と決裁に追われ、
夜は体力も集中力も落ち、
家庭や組織への責任も背負っている。

そんな50代が、
いつ、何を削り、
どこに時間とエネルギーを投じればいいのか。

この問いに対する答えは、
理論の中にはありません。
必要なのは、綺麗な理想論ではなく、
現場でしか生まれない、血の通った戦略です。

私は今、業務部長として組織を回しながら、
個人のメディアを作り、新しい技術と格闘しています。

これは精神論ではありません。
定年という節目を見据えた、
冷徹な「戦略的フルスロットル」の記録です。

過去のキャリアは「サンクコスト」ではない

私には、30年以上にわたるキャリアがあります。
ラジオディレクター、舞台プロデューサーとして、
終わりのない締め切りと人間関係の調整、
そしてクオリティへのプレッシャーの中で生きてきました。

当時は正直、消耗戦だと思っていました。
「いつか穏やかな場所に着陸したい」
そう願ったこともあります。

ですが今、振り返ると見え方が変わります。

あれは消耗ではなく、
離陸のための滑走路(助走距離)を作っていた時間でした。

重量のある機体が空へ飛び立つには、
短い滑走路では足りません。
長く、頑丈に舗装された道と、強い推進力が必要です。

限られた時間で最適解を出す構成力。
予期せぬトラブルを収める胆力。
60点と100点を見極める品質管理。

これらはすべて、
30年かけて舗装してきたアスファルトです。

多くの人は、過去の激務を
「昔の思い出」や「サンクコスト」として処理してしまいます。
ですが私は、これを燃料として再利用します。

40代までの苦労は、
50代で“大型機”を飛ばすためにあった。
ここで減速してしまえば、
せっかく作った滑走路は、ただの道路になってしまいます。

「管理職」と「離陸準備」を両立させる現実解

戦略的フルスロットルとは、
睡眠を削る根性論ではありません。

50代の体に、それは通用しない。

私がやっているのは、
徹底したタイムマネジメントと役割設計です。

業務部長という立場ですが、基本的に定時で帰宅しています。
これは楽をしているわけでも、
仕事を放棄しているわけでもありません。

部下に権限を渡し、
判断を任せ、
組織を「人」ではなく「システム」として機能させる。

それは管理職としての責任であり、
同時に、定年という離陸点に備えるための戦略行動でもあります。

昼は、組織という母艦を動かすために力を使う。
夜は、すぐに飛び立つためではない。
定年という離陸点に向けて、
自分という機体を整備し、燃料を積み込む時間に使う。

スキルが上がるほど、
やりたいことは増え、
時間は確実に足りなくなります。

だから私は、
すべてを同時に伸ばそうとする考えをやめました。

なぜブログを「主軸」に据えたのか

手段ごとの特性を、冷静に見極めた結果です。

YouTubeなどの動画は、どうしても制作に時間がかかる。
本業を持つ会社員が続けるには、コストが高すぎます。

SNSは即時性が高い一方で、
投稿は時間とともに流れ去り、
積み上がる「資産」にはなりにくい。

ポッドキャストは、将来の収益性はまだ不透明です。
それでも、パブリックスピーキングの訓練になり、
AIには真似できない人間の温度や揺らぎを、
低コストで発信できる価値があると考えています。

そうした前提を踏まえた上で、
私はブログを思考の中心に据えることにしました。

検索され、蓄積され、再利用できる。
そして何より、
自分の思考を最もシンプルにアウトプットできる。

限られた時間と体力で戦う50代にとって、
これが現時点で、最も合理的な選択だと判断したのです。

60代の「巡航高度」をつくるために

飛行機が最も燃料を使い、
最も負荷がかかるのは、
空を飛んでいる時ではありません。

地面を離れる「離陸」の瞬間です。

今の忙しさや圧迫感は、
老化による疲れではありません。
定年という離陸点に向けて、
機首を上げている証拠です。

ここでスロットルを緩めたら、
離陸は中止され、
滑走路の端で止まってしまいます。

今、高度を稼いでおけば、
定年後、自前のエンジンで飛び続けられる
「巡航高度」に到達できます。

周囲が着陸態勢に入っても、
私はまだ降りません。

滑走路は十分にあり、
エンジンも温まっています。

50代。
今は、人生で最も重要な離陸準備の時間です。

この記事を書いた人|ミライジュウ

メディア関連企業の業務部長。ラジオ演出30年の経験を経て、
「50代からでも“1円を生む力”は育てられる」と信じて発信中。
毎朝4時起きでランニング・筋トレ継続中。
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