「できる」と「知っている」の間には、深くて大きな溝がある|50代が越えるべき“実践の壁”

習慣と行動心理

定年後のセカンドキャリアを見据え、ビジネス書を読み、セミナーに通い、資格の勉強を始める。
私たち50代は、真面目です。会社人生で培った「勤勉さ」という武器を持っています。

しかし、不思議なことに気づきませんか?

知識は確実に増えている。
マーケティングの用語も覚えた。
成功法則も頭に入った。

それなのに、なぜか「自分の力で稼ぐ」という結果が出ない。
最初の一歩が、いつまでたっても踏み出せない。

「まだ勉強が足りないからだ」
そう思って、また新しいノウハウ本を買いに書店へ向かう……。

もし、あなたがそんなループに陥っているとしたら、今回ご紹介する言葉は、冷水を浴びせられるような衝撃とともに、現状を打破するきっかけになるはずです。

京セラ創業者・稲盛和夫氏の著書『生きる』。
数多の経営者に読み継がれるこの名著の中に、私たちが直面している「停滞」の正体が、残酷なほど端的に記されていました。

「『できる』と『知っている』の間には、深くて大きな溝がある」

今回は、会社という看板を下ろし、個人の力で生きていこうとする私たち50代が、必ず越えなければならないこの「深く大きな溝」について、掘り下げてみたいと思います。

なぜ、優秀な会社員ほど「溝」に落ちるのか

私たち50代の会社員は、長年の経験から多くのことを「知って」います。
ビジネスの仕組み、組織の動かし方、交渉の術。
本を読めば、そこに書かれている理屈をすぐに理解するリテラシーもあります。

しかし、稲盛氏は警鐘を鳴らします。
「知っている(知識)」と「できる(実践)」は、まったくの別物である、と。

「泳ぎ方」を読んでも、水には浮かない

例えば、水泳の教本を100冊読んだとしましょう。
クロールの手の角度、息継ぎのタイミング、水の抵抗理論。
すべてを完璧に暗記し、「知っている」状態になったとします。

では、その人は水に飛び込んだ瞬間、泳げるでしょうか?

答えは「NO」です。
間違いなく溺れます。

水に入り、鼻に水が入る痛みを味わい、手足をバタつかせ、何度も沈みながら体得した感覚がない限り、「泳げる(できる)」ようにはなりません。

私たちが行っている「ビジネスの勉強」も、これと同じではないでしょうか。

ブログの書き方を本で読んだ。
SEOの理論を動画で学んだ。
それで「分かった気」になり、満足してしまう。

しかし、実際にサーバーを契約し、記事を書き、誰にも読まれない悔しさを味わい、そこから修正するという「現場の汗」をかかない限り、その知識は1円の価値も生みません。

会社員マインドの罠

特に私たち会社員は、組織の中で「知っていること(管理・判断)」に価値を置かれるポジションに長くいました。

「実務は部下や現場に任せる」というスタイルが染み付いているため、無意識のうちに「理解すれば仕事は終わり」と錯覚しがちなのです。

しかし、個人のビジネス(ゼロイチ)に部下はいません。
泥臭い現場作業も、頭を下げる営業も、すべて自分でやらなければなりません。

この「頭でっかちの実践不足」こそが、深くて大きな溝の正体です。

稲盛氏は、現場での経験だけが、この溝を埋めてくれると説きます。

複雑に見える問題も、現場で糸を解きほぐすように見ていけば、実は「人間として何が正しいか」という単純な原理原則に行き着くことが多い。

それは、空調の効いた会議室や書斎では、決して見えない真理です。

才能はいらない。必要なのは「考え方」のアップデート

では、どうすればこの溝を飛び越えられるのでしょうか?
「自分には商才がないから」「もう歳だから」と諦める必要はありません。

『生きる』の中で、私が最も勇気づけられたのは、人生の結果を決めるのは「能力」だけではないという教えです。

人生の方程式

稲盛氏は、人生や仕事の結果を次の方程式で表しています。

人生・仕事の結果 = 考え方 × 熱意 × 能力

ここで注目すべきは、「能力」と「熱意」は0点から100点までですが、「考え方」だけはマイナス100点からプラス100点まであるということです。

私たち50代は、ある程度の「能力」を持っています。
しかし、もし「考え方」がマイナスならどうなるでしょうか。

「失敗したら恥ずかしい」
「楽して稼ぎたい」
「なんで俺がこんなことを」

どれも、知らず知らずのうちに染みついた思考です。

素晴らしい能力を持っていても、考え方がマイナスなら、掛け算の結果は「マイナスの大きな数字」になってしまいます。
人生は、うまくいきません。

凡人を非凡に変えるもの

逆に言えば、特別な才能がない「凡人」であっても、

世のため人のために尽くす。
困難から逃げない。
常に感謝する。

こうしたプラスの「考え方」を持ち、誰にも負けない「熱意」で努力を続ければ、とてつもない成果を生み出せるということです。

「継続」についても、稲盛氏は厳しい指摘をしています。

「継続と反復は違います。昨日と同じことを漫然とくり返すのではなく、今日よりは明日と、少しずつ改良や改善をつけ加えていくことが重要です」

ただ続けるだけではダメです。
昨日はここがダメだった。
今日はこうしてみよう。

この「毎日の創意工夫」こそが、凡人を非凡へと押し上げます。

困難を乗り越える「羅針盤」を持つ

「できる」の領域へ踏み出すと、必ず壁にぶつかります。

お客様が集まらない。
商品が売れない。
批判されるかもしれない。

そんな時、人は逃げたくなります。

弱い心が災いを呼ぶ

稲盛氏は自身の経験を振り返り、こう述べています。

「避けよう、逃げようとする心が災いを呼び込んだ」

困難から目を背けると、問題は必ず大きくなります。
しかし、正面から向き合うと、不思議と道は開けていきます。

これは精神論ではなく、セカンドキャリアという荒野を生き抜くための、実践的な指針です。

「カラーで見える」まで思い詰める

もう一つ必要なのが、強烈な願望です。

「できれば稼ぎたい」
「うまくいったらいいな」

その程度では、現実は動きません。

成功した自分の姿が、カラー映像で見えるレベルまで考え抜く。
そこまで思い詰めた計画には、魂が宿ります。

まとめ:知識を捨て、野へ出よう

「『できる』と『知っている』の間には、深くて大きな溝がある」

私たちは、もう十分に勉強しました。
これ以上、ノウハウを集める必要はありません。

必要なのは、行動です。

失敗を恐れるプライドを捨てる。
昨日と同じことをせず、工夫を加える。
成功するまで、強烈に思い続ける。

不格好で構いません。
汗をかきましょう。

その汗の量だけが、
「知っている人」から「できる人」へと、私たちを変えてくれます。

溝の向こう側には、まだ見ぬ自由な景色が広がっています。

この記事を書いた人|ミライジュウ

メディア関連企業の業務部長。ラジオ演出30年の経験を経て、
「50代からでも“1円を生む力”は育てられる」と信じて発信中。
毎朝4時起きでランニング・筋トレ継続中。
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