なぜ個人は「付加価値」をつけられないと感じるのか
副業や新しい挑戦を考えたとき、多くの人が「自分には特別な強みがない」と悩みます。商品に独自の付加価値をつけなければ売れない、他人に負けないアイデアを出さなければ意味がない。そう思うほど、手は止まりがちです。実際、頭の中で立派な企画を練るほど「まだ準備不足だ」と感じ、動けなくなるものです。
私自身、FP試験に挑戦したときにまったく同じ状態になりました。「50代で合格するには、完璧な学習計画を組まないといけない」と思い込み、机に座る時間ばかり増やして実際の勉強は進まない。副業を考えたときも、「いきなり完成度の高い商品を出さなければ」と焦って先に進めませんでした。
けれど気づいたのは、個人が付加価値をつける最初の一歩は、完成品をつくることではなく情報発信を続けることだということです。発信は、頭の中のアイデアを外に出す実験の場。反応が返ってくるからこそ改善が生まれ、改善の積み重ねが付加価値に変わっていきます。つまり、付加価値は「机上で考える」より「小さく発信して反応を見て直す」ことで初めて形になります。
日常を発信に変えると、それが付加価値になる
「付加価値」と聞くと、特別な技術や才能が必要だと思いがちです。でも実際は、日常にある小さな出来事が、他人にとっては十分な価値になります。大事なのは、それを「伝わる形」で外に出すこと。つまり、発信こそが付加価値を生むトリガーです。
たとえば、私が毎朝走っているランニング。自分には当たり前の習慣ですが、「雨の日でも走れる準備のコツ」として書けば、多くの人にとっては実用的な情報です。FP試験の勉強もそうでした。50代での学び直しは「記憶力が落ちるから無理」と思われがちですが、「短時間集中と習慣化で合格できた」と発信すれば、それは付加価値になります。
つまり「日常=素材、発信=料理」です。素材を抱えたままでは価値はゼロ。料理して他人の食卓に出すことで初めて価値が生まれます。どれほど良い体験も、発信しなければ“存在しない価値”に過ぎません。だからこそ「付加価値をつけたい」と思うなら、発信を習慣にすることが最もシンプルで効果的なのです。
付加価値を学べる3冊の本と情報発信への応用
『このオムライスに、付加価値をつけてください』(柿内尚文)
オムライスという日常的な一皿を題材に、「再定義」「ずらす」「言いかえ」など7つの方法で付加価値を考える本です。価値は作り手の熱量ではなく受け手の解釈で決まる。だから同じオムライスでも「懐かしさを呼び起こす」と意味づければ付加価値になる。この視点は、情報発信にも直結します。
記事やSNS投稿も、日記として流すだけでは既存価値にとどまります。そこに「小話を添える」「意味をずらす」工夫を加えれば読者にとっての付加価値に変わります。実際にこの本を手に取った人のなかには「普段の投稿を“誰かを動かす工夫”に変えることができた」と感じた声もありました。つまり、この本は“日常を発信に変える着眼点”を教えてくれます。
『付加価値のつくりかた』(田尻望)
キーエンス出身の著者が「顧客の隠れたニーズを掘り起こす」方法を体系化した一冊です。目次には「構造→行動→成果で考える」「顧客の先のお客を意識する」など、すぐに現場で使えるフレームが並びます。核は「相手がまだ言葉にできていない困りごとを見抜く」ことです。
情報発信に置き換えると、読者が口にしない“モヤモヤ”を解決する記事こそ付加価値になります。「時間がない」「やる気が続かない」「情報が多すぎて整理できない」などの潜在的な悩みに応える形で発信すれば、あなたの内容は一気に選ばれるものに変わります。補足すれば、実際にこの本を参考に「顧客の声なき声」を拾って成果を出した事例も紹介されています。個人にとっては、「観察力=発信テーマを見つける力」として活かせる本です。
『ブルー・オーシャン戦略』(W. チャン・キム)
「競争の激しい市場から抜け出し、誰も手をつけていない領域を作れ」という有名な戦略書です。フレームワークとして「なくす・減らす・増やす・新しくつくる」という視点を提示し、自分の価値を再設計する方法を解説しています。
個人の情報発信に応用するなら、テーマの“ずらし”がブルーオーシャンです。たとえば「資格勉強法」はレッドオーシャンですが、「50代からの資格勉強法」とすれば一気にブルーオーシャンに変わります。競争を避けるだけでなく、経験や立場を活かした切り口を提示できるのです。実際に「テーマを少しずらすだけで読者の反応が変わった」という声もありました。つまり、発信の差別化は“ずらし”にあるのです。
総じて大切な5つ──付加価値と発信をつなぐ原則
- 顧客目線で再定義する
価値は「便利」ではなく「安心」や「未来の可能性」として言い換えたときに響きます。発信でも「何を伝えたいか」ではなく「読者がどう変わるか」を再定義することが肝心です。 - 文脈を変えて差を生む
同じ内容でも、対象や場面を変えれば新しい価値になります。若者向けの勉強法を「50代でもできる」に変える、職場の改善術を家庭管理に応用する。文脈の移動は発信の付加価値です。 - 情報・ストーリーを重ねる
やり方だけでなく「なぜそれをやったのか」という背景を添えることで、人は動かされます。体験談や小話が、発信を単なる情報から「役立つ知恵」に変えるのです。 - シンプルにまとめる
複雑な説明は避け、3~5ステップに分解して提示する。記事タイトルも短く明快に。「シンプルさ」こそ最大の付加価値です。 - 改善を積み上げる
発信は出して終わりではなく、反応をもとにリライトして育てるもの。続けて改善する姿勢そのものが、他者から見た付加価値に変わります。
今日からできる実践ステップ
ステップ1:日常の素材を棚卸しする
ステップ2:一言で切り出してみる
ステップ3:3つの手順に分解する
ステップ4:小さな背景や失敗談を添える
ステップ5:まず公開する
ステップ6:反応を見て修正する
ステップ7:3本続けて書いたら連載化する
こうして「商品開発」よりも先に「情報発信の仕組み」を回すことが、個人にとっての付加価値づくりの最短ルートです。
まとめ──続ける発信が信用と収益に変わる
付加価値は特別な発明のことではありません。日常にある素材を、意味や文脈や物語を少し足して伝えること。シンプルに整理して発信を続けること。そして、改善を積み重ねて信用を育てること。続ける人はいつか「その人らしい文脈」を獲得します。文脈は信用を生み、信用は選ばれる理由になり、やがて収益に変わります。
だからこそ結論は明快です。個人の付加価値は、情報発信から始まる。続けることで信用と収益が生まれる。
この記事を書いた人|ミライジュウ
メディア関連企業の業務部長。ラジオ演出30年の経験を経て、
「50代からでも“1円を生む力”は育てられる」と信じて発信中。
毎朝4時起きでランニング・筋トレ継続中。
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