借金は怖い。借金は悪い。現金で買えないなら身の丈に合わない──。
数十年、日本社会に染み付いてきたこの価値観は、多くの人の行動を縛り続けてきました。とくに資産形成やキャリアの再構築を考える50代前後にとって、この「借金アレルギー」は知らず知らずのうちに成長のブレーキになっています。
ところが今、日本は大きな転換点に立っています。
高市首相が掲げる成長戦略、片山財務大臣が進める資産所得倍増プランの強化。この二つは、従来の「貯金の国」日本から、「投資の国」日本へと舵を切る試みです。
つまり、借金を「悪」と決めつける時代は終わり、感情論から合理性へ。
これまでの価値観では読み切れない動きが、静かに始まっています。
そしてもうひとつ。
この転換が本質的に意味するのは、日本にいずれ“信用スコアの時代”が来る、という必然です。
ここから一緒に、その理由を深掘りしていきます。
<h2>良い借金と悪い借金|未来のためのレバレッジか、消耗か</h2>
投資の本質は、お金の増え方と減り方を合理的に理解することです。
借金も同じで、「借金=悪」という一括りでは見えない世界があります。
世の中には、明確に分かれる2種類の借金があります。
ひとつは未来の自分にレバレッジをかけるための「良い借金」。
もうひとつは未来の自分からお金を奪う「悪い借金」。
言い換えるなら、
**良い借金=未来の収入を先取りする投資**
**悪い借金=未来の消費を前借りする罠**
ここを理解すると、お金の使い方は一気に変わります。
良い借金とは、お金を生む装置を買うための借金です。
・投資用不動産(家賃収入や売却益)
・事業融資(利益を生む設備投資)
・奨学金や教育ローン(収入が上がる専門スキル獲得)
これらは、借りた金額以上のキャッシュフローを生む“未来の自分へ投資”と言えます。
一方で悪い借金は、価値が下がるもののために高金利でお金を借りる行為です。
・リボ払い・カードローン
・自動車ローン(価値は買った瞬間から下がる)
・浪費や遊興のための借入
未来の負担が膨らむだけで、資産形成とは真逆に向かいます。
この区分は、情報の多い現代でも意外なほど曖昧に扱われています。
でも、本当はここが人生の分岐点です。
借金をきちんと理解する知識は、“稼ぐ力“をつくる第一歩です。
<h2>日本人が借金を恐れる、深層にある「歴史」と「文化」</h2>
では、なぜ日本人にはここまで強い借金アレルギーがあるのか。
答えはひとつではありません。
むしろ文化、歴史、倫理観が絡み合って、深いところに根を下ろしています。
まず、日本には「恥の文化」があります。
分をわきまえる。身の丈に合った暮らしをする。
これを外れると「見栄」「浪費」とされ、世間からの評価が気になる社会です。
借金する=自制できない人
というレッテルが貼られやすい構造があるんですね。
さらに追い討ちをかけたのが、90年代のバブル崩壊です。
土地と株に借金で突っ込んだ結果、残ったのは莫大な不良債権。
人生ごと折れてしまった人をたくさん見てしまった世代が、私たちの親世代です。
「借金は人生を壊す」
この強烈なイメージが、子どもたちにもそのまま受け継がれました。
そしてもう一歩遡ると、江戸時代には借金に“時効”という概念がありませんでした。
先祖の借金は子孫が背負う。家族・一族単位で責任を負う。
借金とは、個人の失敗ではなく“家の信用問題”だったのです。
こうした文化と歴史の土壌が、「借金=悪」という価値観を今まで強く支えてきました。
<h2>アメリカにはなぜ借金嫌いがいないのか?鍵は「信用(クレジット)スコア」</h2>
対照的に、アメリカには借金アレルギーがほとんどありません。
なぜか。
アメリカには「信用スコア」という絶対的な軸があるからです。
借金は返せば返すほど、自分のスコアが上がっていきます。
スコアが高いほど、人生の多くの場面で有利になります。
・住宅ローンの金利が下がる
・車のローンが通りやすい
・家を借りる審査がスムーズ
・クレジットカードの限度額アップ
逆に借金を“使わない”ことは、信用履歴がない=評価されないという扱いになります。
つまりアメリカでは、
借金をしない=金融的に不利
というロジックになるわけです。
借金は「未来を作るチケット」であり、
返済実績こそが“信用”という資産になる。
借金を敵視するのではなく、積極的に使いこなす。
この考え方がアメリカの経済文化を支えています。
<h2>日本にも信用スコアの時代が来る。高市・片山体制が示す必然</h2>
日本が「貯蓄から投資へ」と舵を切る以上、従来の価値観だけではもう限界です。
個人が低金利でお金を調達し、未来の投資に活用できるようになるためには、
“信用を可視化する仕組み”がどうしても必要になります。
つまり、信用スコア。
これはもう時間の問題です。
すでに日本の信用情報機関は「クレジット・ガイダンス」という指数を出し始めています。
金融庁もスタートアップ支援の文脈で「個人の信用度の多面的評価」の必要性を示しています。
信用=数字で評価される時代の入口に、私たちは既に立っているのです。
<h2>これからの資産形成に必要なのは「借金の戦略性」と「信用の育て方」</h2>
これからの時代を生きる私たちに必要なのは、
・良い借金と悪い借金を区別する知識
・信用そのものを資産として育てる視点
・借金を「怖い」ではなく「戦略的レバレッジ」と捉える思考
この3つです。
大切なのは、感情ではなく合理性で判断すること。
借金を遠ざけ続けると、チャンスも同時に遠ざかります。
逆に、良い借金を使いこなし、確実に返済して信用を積み上げていけば、
チャンスは増える。金利は下がる。使えるお金も増える。
つまり“未来の選択肢”が広がっていきます。
借金を恐れるのではなく、活かす。
信用を無形資産として育てる。
この視点を持つかどうかで、10年後の景色はまったく違ってきます。
未来を広げるのは、感情ではなく戦略です。

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