情報発信が続かない本当の理由
「ブログを書こう」「SNSで発信を習慣にしよう」と決意しても、多くの人が数週間で手が止まってしまいます。最初はやる気に満ちていても、時間がない、成果が出ない、何を書けばいいか分からない…と悩みは尽きません。実際、統計でもブログを開設して半年以内に更新が止まる人は7割を超えるとも言われています。では、どうすれば続けられるのか。そのヒントを与えてくれるのが、2,500年前の孔子の言葉です。
論語には「知る者はこれを好む者に如(し)かず。好む者はこれを楽しむ者に如(し)かず」という一節があります。直訳すると「知っているだけの人は、好きな人に及ばない。好きな人も、楽しむ人には及ばない」。これは学びや行動において「知識」よりも「好き」、そして最強なのは「楽しむ」境地だと説いたものです。現代の行動心理学とも重なるこの考え方は、情報発信を続けるための大きなヒントになります。
知識では人は動けない
多くの人が情報発信を始めるとき、「知識を持っているから発信しよう」と考えます。しかし、知識は必ずしも行動に直結しません。ダイエットに関する正しい知識を持っていても、運動を続けられないのと同じです。行動心理学では、知識と行動の間には「実行意図」という橋が必要だとされます。人は「分かっているけどやらない」状態に陥りやすいのです。
私自身もFP資格や会計の知識を持っていても、最初から情報発信に活かせたわけではありませんでした。「伝えたい」という気持ちが芽生えて初めて、行動に移れたのです。知識だけで発信を続けるのは難しい。孔子が言う通り「知る」だけでは限界があるのです。
「好き」になると行動が変わる
次の段階は「好む」こと。心理学でいう「内発的動機づけ」にあたります。これは報酬や義務感ではなく、自分の内側から湧き上がる動機です。例えば、発信した記事に「役に立った」とコメントをもらったとき、心が動いて「また書こう」と思える。これは知識だけでは得られない感覚です。
50代になっても新しいことを「好き」と思えると行動は変わります。私は毎朝のランニングを通じて「体が整うと頭も冴える」ことを実感しました。だから続けられる。同じように、発信も「発信すると気持ちが整理される」「誰かの役に立てる」という感覚が「好む」につながります。
「楽しむ」人が最強である理由
孔子はさらに「楽しむ者に如かず」と言います。楽しむ段階に入ると、人は努力を努力と感じなくなります。心理学でいう「フロー(没頭状態)」に近いものです。時間を忘れて書ける、発信自体が生活の一部になる。この状態に入ると、習慣化は格段に容易になります。
行動心理学でも「習慣化の黄金ループ」が知られています。きっかけ(cue)→ 行動(routine)→ 報酬(reward)のサイクルを繰り返すことで、行動が自動化されるのです。発信を楽しむ人は、書くこと自体が報酬になるため、自然とループが回り続けます。義務感や数字のためにやっている人との差はここで広がります。
逆の視点:努力や根性は続かない
よく「発信は根性だ」「とにかく毎日更新」と言われます。確かに短期的には有効ですが、長期的には燃え尽きのリスクが大きい。努力や根性は「外発的動機づけ」に頼るからです。外部からのプレッシャーは一時的に行動を生みますが、心理学的には「やらされ感」が強まるほど継続率は下がります。
私も過去に「PVを増やすために毎日書こう」と無理をした時期がありましたが、長くは続きませんでした。数字が伸びないと一気にやる気が落ちる。逆に「今日はこのテーマが面白い」と思って書いた記事は、自然に筆が進み、振り返ると一番読まれていたりします。努力で続けるのではなく、楽しむ工夫をすることこそが本質です。
「楽しむ」発信を習慣にする3つの工夫
では、どうすれば「楽しむ」モードに入れるのか。ここで実践的な工夫を紹介します。
1つ目は「小さなテーマで始める」こと。大きな記事を書こうとすると負担になります。短い発信を積み重ねることで達成感を得やすく、楽しさにつながります。
2つ目は「相手の反応を拾う」こと。誰かの役に立ったというフィードバックは強い報酬になります。コメントやいいねを「楽しむ燃料」に変えるのです。
3つ目は「自分の物語を語る」こと。単なる情報より、自分の体験を交えた方が筆も軽くなり、読者にも届きやすい。発信が「作業」ではなく「自己表現」になれば、楽しさは倍増します。
論語と心理学が重なる普遍の真理
ここまで見てきたように、「知る」「好む」「楽しむ」の三段階は、行動心理学の理論と見事に重なります。知識だけでは人は動かない。好きになると行動が増える。そして、楽しむことで習慣に変わる。これは2,500年前の中国でも現代の心理学でも変わらない人間の原理です。
発信を続けたい人は、知識を積むことに安心せず、「どうやって楽しむか」を意識するべきです。たとえば「今日はこの言葉が面白かったからシェアしよう」と軽く始めるだけでもいい。小さな楽しさを積み重ねることが、やがて「続けられる人」への道になります。
行動へのヒント:今日からできる一歩
最後に、すぐ試せる一歩を提案します。それは「楽しんで書けるテーマを一つ決める」ことです。専門的でなくても構いません。自分が最近感動した本や出来事を、誰かに伝えるつもりで書いてみる。知識を並べるのではなく「自分はこう感じた」と言葉にしてみる。その瞬間に、発信は知識から感情へ、そして楽しみへと変わります。
情報発信を続けるコツは、知識量ではありません。楽しめるかどうかです。論語が語る「楽しむ人が最強」という真理を、ぜひ日々の発信に活かしてみてください。
この記事を書いた人|ミライジュウ
メディア関連企業の業務部長。ラジオ演出30年の経験を経て、
「50代からでも“1円を生む力”は育てられる」と信じて発信中。
毎朝4時起きでランニング・筋トレ継続中。
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