導入
「サービス提供者って誰のこと?」と聞かれたら、あなたはどう答えるでしょうか。
商品を売る人? 知識を教える人? それとも接客をする人?
実は、これらはすべて正解のようで、核心を突いていません。
サービス提供者とは「相手と一緒に共同作業をする人」です。
Zoom会議でカメラをオフにして無反応でいる人。
「僕、人見知りなんで」と言って距離を置く人。
こうした態度は、そもそも共同作業を放棄しているのと同じです。
サービス提供者の本質は「相手の痛みに気づき、安心を与えること」。
その視点を持てるかどうかで、信頼されるかどうかが決まります。
サービス提供者は「共同作業を担う人」
サービス提供者という言葉を、接客業やフリーランスの仕事に限定して考える必要はありません。
むしろ日常のすべての場面で、人は誰かのサービス提供者になります。
- 会議で意見を交わすとき
- 部下の相談を聞くとき
- 家族の話に耳を傾けるとき
サービス提供者の役割とは「相手の安心と変化を一緒につくる人」です。
つまり一方的に与えるのではなく、相手と共同で場を育てていく人のことを指します。
人の痛みに気づけないのはサービスではない
「人の痛みがわからない人」がいます。
これは冷酷さというよりも、相手の立場に立とうとする想像力の欠如です。
痛みを完全に共有する必要はありません。
でも、「そこに痛みがあるのだろう」と想像できることが最低限のスタートです。
Zoom会議で誰かが一生懸命プレゼンしているのに、無表情で無反応の参加者がいたらどうでしょう。
発表者は「伝わっていないのか」「つまらないのか」と不安になります。
それは結果的に、プレゼンそのものの価値を下げてしまう。
つまり、サービス提供者の役割を放棄しているのです。
明石家さんまさんに学ぶ「聞かれることの意味」
40年以上前、明石家さんまさんが出演していたラジオ番組の裏話があります。
さんまさんのスタジオには「見学者を入れないでくれ」というお達しがあったそうです。
理由はシンプル。
さんまさんは、ガラス越しにいるディレクターやミキサーのリアクションを見ながら喋っていたからです。
彼らが笑ったり、頷いたりしているのを確認することで、「今の一言は伝わった」と確信を持てる。
ところが、スタジオに見学者がいるとどうなるか。
見学者はさんまさんの話を聞くよりも、機材や特別な体験に意識を奪われてしまう。
つまり「言葉を聞いていない」。
さらに厄介なのは、「この人は誰なんだ?」という疑問がさんまさんの頭に浮かび続けてしまうことです。
正体がわからない人がそこに座っているだけで、「味方なのか、敵なのか、ただの通りすがりなのか」と考えが引っ張られる。
その結果、集中して喋ることができなくなるのです。
さんまさんにとってそれは「反応が返ってこない」状態と同じ。
どれだけの話芸を持っていても、聞かれていない環境、あるいは「誰かわからない相手」がいる環境では安心して喋れない。
この話は、サービス提供者の本質を突いています。
提供は一方通行ではなく、必ず「受け手の反応」と「安心できる相手」があって初めて成立する。
Zoom会議で無反応の人がいるのは、さんまさんのスタジオに「聞いていない見学者」を座らせているようなものです。
「あの人は誰なのか?」という疑念を残したままでは、共同作業はうまく回らないのです。
「人見知りなんです」は免罪符にならない
「僕、人見知りなんで」。
よく耳にする言葉ですが、サービス提供者としては致命的なフレーズです。
人見知りは性格の一部だから、否定はできません。
しかしそれを理由に相手との距離を縮めないのは、共同作業を拒否している宣言になってしまいます。
「人見知りだから無理です」は、相手にとっては「あなたを受け入れません」というメッセージにしか聞こえません。
これは聞き方のテクニック以前の問題です。
サービス提供者の最低ライン
では、最低限どんな態度を取ることが必要なのか。
- 相手を拒絶しないこと
- 相手の言葉が届いていると伝えること
- 共同作業に参加していると示すこと
たったこれだけのサインがあるだけで、相手は「この人は私と一緒にやってくれている」と感じられるのです。
聞き方がサービスを決める
サービス提供者に欠かせないのは「話の聞き方」です。
ここでいう聞き方は、心理学で言うアクティブリスニング(能動的傾聴)やミラーリングといったテクニックよりも先に、相手と一緒に場をつくろうとする姿勢を意味します。
- 無表情で黙って聞いている
→ 相手は「興味がない」と受け取る - 頷きや笑顔を返す
→ 相手は「伝わっている」と安心する
聞き方は、単なる受け身ではなく、安心と信頼を提供する能動的な行為なのです。
ラジオ現場で学んだ「聞き方の力」
私自身もラジオディレクターとして長年仕事をしてきました。
収録現場で、演者がマイクの前で話しているとき、ディレクターが無反応だったらどうなるでしょうか。
演者は「今の話はよかったのか?」「もっと違う言い方がいいのか?」と不安になります。
逆に、ちょっと笑ったり頷くだけで、安心してのびのびと話せるのです。
つまり、演者のパフォーマンスを引き出すのは、ディレクターの聞き方次第。
これはそのまま「サービス提供者の在り方」と重なります。
サービス提供者の本質=共同作業の引き受け
ここまで見てきたように、サービス提供者の本質は 「共同作業を引き受ける」こと にあります。
- 相手の痛みに気づくこと
- 人見知りを理由に突き放さないこと
- 聞き方で安心を届けること
これらはすべて「一緒にやろう」というメッセージです。
逆に、それが欠けると「この人は自分を拒絶している」と相手に伝わり、信頼を失います。
今日からできる行動のヒント
サービス提供者として、今すぐできることは難しくありません。
- 相手の話に頷きや相槌を返す
- 表情で「聞いているよ」と伝える
- 相手の言葉を要約して返す
- 「人見知りなんで」をやめて、「緊張しますけど一緒にやりたいです」と言い直す
これだけで、相手に与える印象は大きく変わります。
サービス提供者の一歩は、相手を突き放さないことから始まるのです。
まとめ
サービス提供者とは「相手と一緒に場をつくる人」。
それは、相手の痛みに気づき、安心を届け、共同作業を引き受ける人のことです。
Zoom会議でリアクションを返すことも、ラジオ収録で頷くことも、飲食店で笑顔を見せることも、すべて同じ。
サービス提供者としての態度があるかどうかで、相手の安心と信頼は決まります。
「人見知りだから」と突き放すのは簡単です。
でも、それは共同作業の放棄。
サービス提供者であり続けるためには、まずは「相手と一緒にやる」という覚悟を持つことから始めましょう。
この記事を書いた人|ミライジュウ
メディア関連企業の業務部長。ラジオ演出30年の経験を経て、
「50代からでも“1円を生む力”は育てられる」と信じて発信中。
毎朝4時起きでランニング・筋トレ継続中。
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タグ: サービス提供者,聞き方,人見知り,共同作業,信頼,コミュニケーション,明石家さんま
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