不安はこうして売られる|学べば見抜ける「不安ビジネス」の正体

私たちの身の回りには、なぜこれほど「不安」が溢れているのでしょうか。

老後資金が足りない。
今の仕事はいつまで続くかわからない。
健康リスクが高まっている。
このままでは時代に取り残される。

気づけば、商品やサービスの多くが、
何かを「良くする」前に、まず「怖がらせる」ところから始まっています。

これは偶然ではありません。
不安は感情ではなく、設計された「売り物」だからです。

6時間のセミナーで増えたのは、希望ではなく不安だった

先日、私はある大手企業が主催する「50代向けキャリアアップセミナー」に参加しました。

定年を数年後に控えた世代を対象に、
これまでのキャリアを棚卸しし、
後半戦の人生設計を描くという名目の、全6時間のセミナーです。

会場では、自分の強みと弱みを書き出し、
現在の資産状況をバランスシートに落とし込むワークが続きました。

内容自体は、間違っていません。
自分の現状を把握することは、必要な作業です。

しかし、時間が経つにつれ、妙な違和感に襲われました。

人生を見つめ直しているはずなのに、
なぜか心が軽くならない。

むしろ、
「このままでは大変なことになる」
「自分は何か決定的に足りていないのではないか」
そんな不安が、じわじわと増幅していく。

そしてセミナーの最後に提示されたのが、
ファイナンシャルプランナーによる「個別相談」の案内でした。

その瞬間、私は確信しました。

この6時間は、
自分の人生の主人になるための時間ではない。
「不安」という商品を買わせるための準備期間だったのではないか。

不安ビジネスの正体は「マッチポンプ構造」

不安を売る商売には、驚くほど共通した型があります。

まず、将来の統計データや平均値を提示し、
「最悪の未来」を想像させる。

次に、その不安を解消できる唯一の手段として、
商品やサービスを差し出す。

これは典型的なマッチポンプです。

火をつけてから、消火器を売る。

「老後資金は2,000万円不足する」
「2人に1人は大病になる」
「今のスキルでは生き残れない」

これらは、あなた個人の現実ではありません。
平均値が作り出した“物語”です。

しかし人は、数字と「将来」という言葉に弱い。
想像力が一度暴走すると、
実体のない恐怖が、現実以上の力を持ち始めます。

不安の正体を見抜くヒントをくれた哲学者

この構造を、100年以上前に見抜いていた人物がいます。

フランスの哲学者、アランです。

アランは著書『幸福論』の中で、
人間の不幸の多くは「体の不調」と「想像力」から生まれると指摘しました。

人は、何もしていないとき、
勝手に最悪の未来を想像し、
自分で自分を不幸にしてしまう。

だから彼は、こう言い切ります。

悲観主義は気分によるものであり、
楽観主義は意志によるものである。

不安に飲み込まれるか。
自分の足で現実に立つか。
分かれ道は、意志にあります。

対策①:不安を「問い」に分解する

不安に対抗する最初の方法は、
感情のまま考えないことです。

おすすめなのは、「なぜ」を繰り返す思考。

「なぜ不安なのか」
「何が足りないと思っているのか」
「それは誰の基準なのか」

問いを重ねると、
漠然とした恐怖は、具体的な課題へと変わります。

形のない怪獣は怖い。
しかし正体が見えた瞬間、
それはただの作業になります。

対策②:数字を「守る道具」として使い直す

不安ビジネスは、数字を使います。

だからこそ、
数字を「支配される道具」から、
「自分を守る道具」へと取り戻す必要があります。

大切なのは、
足りないものを探すことではありません。

今、何を持っているのか。
何がすでに武器になっているのか。

数字は、人を縛るためにあるのではない。
現実を冷静に把握するための道具です。

自分の人生を、
自分の手で把握できている人は、
他人が作った不安に振り回されません。

結論:不安は感情ではなく、構造である

不安は、自然に湧いてくるものではありません。

多くの場合、
意図的に作られ、
増幅され、
商品とセットで差し出されます。

しかし、構造で作られたものは、
学べば見抜けます。

不安に勝つ必要はありません。
不安を「理解」すればいい。

理解した瞬間、
あなたはもう、
誰かが用意した「個別相談室」に
駆け込む側の人間ではなくなっています。

答えは外にはありません。
自分の頭で問い、考え、選ぶ。

それこそが、
不安ビジネスから自由になる、
もっとも知的で、確実な方法です。

この記事を書いた人|ミライジュウ

メディア関連企業の業務部長。ラジオ演出30年の経験を経て、
「50代からでも“1円を生む力”は育てられる」と信じて発信中。
毎朝4時起きでランニング・筋トレ継続中。
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