なぜ人は変革に失敗するのか
副業を始めようと意気込んでブログを立ち上げたのに、最初の数記事を書いたところでアクセスはゼロ。
更新する気力が薄れて、気がつけば数か月放置。そんな経験はありませんか。
資格を取って「これで稼げるはず」と思ったものの、誰からも声がかからず活用の場がない。
あるいは「毎日ランニングや勉強を続けられる自分なら副業も続く」と信じて動き出したのに、収益が一向に発生せず、結局「やっぱり自分には向いていない」と諦めてしまう。
これらは決して珍しい話ではありません。
むしろ、多くの人が同じパターンにはまっています。
やろうと決めても続かない。
続けても成果が出ず、やる気が尽きる。
一時的に成果が出ても、それを習慣や仕組みに定着させられず元に戻る。
実はこの失敗パターン、個人に限ったことではなく、世界中の大企業も同じように繰り返してきたのです。
その根源にある問題とは――「危機感」です。
最大の理由は、「危機感を持てないまま走り出す」ことにあります。
人間は本能的に現状を維持しようとする生き物です。
だから、よほど強烈に「このままではまずい」と感じなければ、惰性に流されてしまうのです。
逆に言えば、危機感さえ明確になれば、そこから次のステップに進む道が開けます。
この「なぜ危機感が必要なのか」を体系的に整理したのが、コッターの「変革の8段階プロセス」です。
次の章では、その全体像を紹介していきます。
コッターの8段階プロセスとは
ジョン・コッターは、ハーバード・ビジネススクールの名誉教授であり、世界的に著名なリーダーシップ研究の第一人者です。
『Leading Change(企業変革のリーダーシップ)』などの著書はベストセラーとなり、企業や行政機関の研修でも幅広く採用されてきました。
経営理論の世界で「変革とリーダーシップといえばコッター」と言われるほどの存在です。
そのコッターがまとめた「変革の8段階プロセス」は、もともと企業の大規模な変革を成功させるための枠組みです。
しかし実際には個人の挑戦にもそのまま当てはまり、順番を飛ばすと失敗するという点で普遍的です。
ここで一度、原典にある8つのステップを整理してみましょう。
1. 危機感を高める
人は基本的に「変わらない方が安心」だと感じます。
だから現状維持を打ち破るには、「このままでは危ない」という実感が必要です。
副業で言えば、将来の生活費不足や定年後の収入減といった現実を直視すること。
危機感は行動のガソリンであり、これがなければ次のステップに進めません。
2. 変革を導くチームをつくる
副業は一人でできるように見えて、実は孤独に耐えられずに挫折する人が多いものです。
そこで大事になるのが、応援してくれる家族や仲間、同じ目標を持つコミュニティの存在。
たとえ小さな声かけでも「やってみよう」と支えてくれる人がいれば、自分一人では出せない推進力が生まれます。
3. ビジョンと戦略を策定する
「稼ぎたい」だけでは曖昧すぎて行動が続きません。
副業なら「3年で月5万円、FP資格とITスキルを活かして」といった具体像を描く必要があります。
ビジョンは未来像をワクワクさせる力、戦略はその道筋を示す地図。
この二つがそろうことで、日々の努力に意味づけが生まれます。
4. ビジョンを周知徹底する
組織なら社員に伝えることですが、個人の場合は「外に宣言する」ことです。
ブログで書く、仲間に話す、SNSに投稿する。
言葉にして外へ出すことで、単なる頭の中の願望が「やらざるを得ない約束」に変わります。
宣言は自分への最大のプレッシャーであり、同時に支えにもなるのです。
5. 行動を促す環境を整える
人間は意志よりも環境に左右されやすい存在です。
「時間がない」「集中できない」といった壁は、工夫次第で取り除けます。
例えば朝活を習慣にする、作業スペースを整える、SNSを制限するなど。
やる気に頼らず、行動しやすい環境を用意することが、継続の鍵となります。
6. 短期的な成果を実現する
大きな成功は遠すぎて心が折れるもの。
だからこそ「小さな勝利」を先に積み上げることが欠かせません。
ブログで初めてコメントをもらう、アフィリエイトで1円を稼ぐ、誰かに「役立った」と言われる。
この体験が「自分にもできる」という脳内の報酬回路を強化し、次の行動につながります。
7. さらに変革を推し進める
短期的な成果はゴールではなくスタートです。
最初の1円を1,000円に、1人の相談を10人に、と次へ広げていく。
成功体験の勢いをそのまま次の挑戦につなげることで、変革は加速し続けます。
小さな成功に満足して立ち止まらないことが大切です。
8. 新しい文化として定着させる
最終段階は、副業や学びが「特別な活動」ではなく「日常の一部」となることです。
歯を磨くようにブログを書く、当たり前のように勉強する。
このレベルまで落とし込めば、一時的なやる気や流行に左右されず、長期的に成果を積み重ねられるようになります。
コッター理論の特徴と、誰に効くのか
世の中にはドラッカーの「マネジメント」やポーターの「競争戦略」など、多くの経営理論があります。
それらが「分析」や「戦略設計」に強みを持つのに対し、コッターの理論はひたすら「人を動かすプロセス」に焦点を当てているのが特徴です。
数字や戦略の正しさがあっても、人が動かなければ変革は進みません。
コッターが示した8段階は、頭で理解するためではなく「行動をどう連鎖させるか」を設計するためのもの。
つまり理屈よりも現実的で、感情や習慣の力を強く意識した理論なのです。
では、どんな人がこの理論を選ぶべきでしょうか。
答えは「知識やスキルは持っているのに、行動に移せない人」。
副業を始めたいのに腰が重い。
ビジョンはあるのに続かない。
チャンスはあるのに習慣化できない。
そんな「行動の壁」に悩む人にとって、コッターの理論は実践的な羅針盤になります。
行動への一歩
最終的に、すべては 「危機感を持つ」 ことから始まります。
危機感がなければビジョンは描けず、小さな成果を求める気力も生まれません。
だから、あなたに最初の一歩としておすすめしたいのは――
「自分の未来に対する危機感を、紙に書き出すこと」 です。
「もし副業を始めなければ、5年後にどうなっているか?」
「もし何も変えなければ、どんな不安が現実になるか?」
これを一度、文字にして目で見ること。
それがあなた自身の変革のスタート地点になります。
この記事を書いた人|ミライジュウ
メディア関連企業の業務部長。ラジオ演出30年の経験を経て、
「50代からでも“1円を生む力”は育てられる」と信じて発信中。
毎朝4時起きでランニング・筋トレ継続中。
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