やりたいのに体が動かない50代へ|心理学と古典から学ぶ“行動できる自分”のつくり方


「やらなきゃいけないことは分かっている。YouTubeに動画をアップすればいい、Kindle本を書き始めればいい。頭では理解しているのに、なぜか体が動かない。」

これは多くの人にとって“あるある”の感覚です。私自身も50代になり、「副業で月5万円を稼ごう」と決意したのに、撮影機材を買って満足し、最初の動画を撮る勇気が出なかったことがあります。まるでエンジンはあるのに、キーを回せない車のように。

では、なぜ「やりたいのに動けない」のか。


動けないのは意志が弱いからではない

多くの人が誤解しているのは、「自分のやる気や根性が足りないから、行動できない」と思い込んでしまうことです。

ベンジャミン・ハーディの著書『FULL POWER』は、ここに一石を投じます。彼は「意志力は筋肉のようなもの。限界があり、使えばすぐに消耗する」と指摘します。私たちは「気合で何とかする」と考えがちですが、実は意志力だけに頼っても長期的には続かない

つまり、動けないのは怠け心のせいではなく、意志力という燃料がそもそも限られているからです。

「じゃあ、自分はずっと変われないのでは?」と不安になりますよね。でも大丈夫。ハーディは「環境を変えることこそが、人を変える最大の鍵」だと説いています。意志ではなく、環境に行動を委ねる。たとえばスマホを別の部屋に置くだけで、作業への集中力は大きく変わるのです。


失敗が怖いと人は止まる

次に思い当たるのが「失敗したらどうしよう」という気持ちです。カーネマンの『ファスト&スロー』で紹介されている損失回避バイアスは、まさにこの状態を説明しています。

人間は「同じ価値を得る喜び」と「同じ価値を失う苦痛」を比べると、後者を2倍以上も強く感じると言われています。だから、「動画を出せば10人に喜んでもらえるかもしれない」よりも「もし1人にでも笑われたらどうしよう」という恐怖の方が勝ってしまう。

私も最初の動画を撮ったとき、「噛んだらどうしよう」「友人にバカにされたらどうしよう」と頭の中で声が響き続け、公開ボタンを押す指が震えました。

でも実際にアップしてみたら、拍子抜けするほど何も起こらない。数十回の再生で、見てくれた数人が「参考になった」とコメントをくれた。それだけで「やってよかった」と思えたのです。

失敗を恐れて止まっていた時間こそが、実は一番の損失だったと今では思います。


小さな勝利から momentum をつくる

ここで役立つのが『孫子の兵法』の一節、「勝てる戦いだけをする」という戦略です。孫子が言うのは、無謀な戦を仕掛けるな、まず勝てるところから着実に制していけ、ということ。

これを日常の行動に置き換えると、「最初の一歩を大きくしすぎない」という知恵になります。いきなり100点の動画や300ページの本を完成させるのは無理があります。だからこそ、まずは勝てる一歩を選ぶのです。

私の場合、最初の一歩は「とりあえず3分だけ話す動画を撮ってみる」でした。照明も適当、編集もなし。それでも「公開できた」という事実が、自分にとって大きな勝利になりました。そこから2本目、3本目と続けるうちに、「あ、やればできるんだ」と momentum が生まれ、だんだんとハードルが下がっていきました。

動けないときこそ、小さく勝って流れをつくる。これが孫子の知恵を現代に活かす方法です。


環境を味方につけるという戦略

行動できないとき、多くの人は「自分の気持ちを奮い立たせよう」と考えます。けれど本当に大事なのは、環境をどう整えるかです。

『FULL POWER』では、「人は環境の産物だ」と繰り返し強調されています。人間の思考や感情は、意外なほど周囲の環境に左右される。つまり、「意志力で頑張る」のではなく、自然に行動してしまう環境を自分でつくることが重要なのです。

たとえば私は、机の上を片付けてカメラを出しっぱなしにするようにしました。すると「よし、撮るぞ」と意気込まなくても、座ればスイッチを押したくなる。まさに環境が私を動かしてくれる感覚です。

ハーディは、環境をデザインする具体的な方法として、

  • スマホを作業部屋の外に置く
  • 作業の開始を「朝のコーヒーを飲んだら」など習慣と結びつける
  • 友人に「今週中に動画を一本出す」と宣言して外的プレッシャーを作る

といった工夫を提案しています。これらはすぐに試せる小さな仕掛けですが、行動のハードルを大きく下げてくれます。


行動を止めないために必要な視点

ここで、少し違う角度から考えてみましょう。

50代になると、どうしても「もう今さら始めても遅いのでは」と思いがちです。若い人と比べて新しいことに飛び込むのが怖くなるのは自然なことです。ですが、実際には逆です。

これまでのキャリアで積み上げてきた経験や知識は、20代や30代にはない大きな武器。若い人は情報は持っていても、経験に裏打ちされたストーリーを持つ人は少ない。だからこそ、今から始めることに大きな意味があります。

「若いときに始めていれば…」と後悔するよりも、「今だからできること」に集中した方がずっと健全です。環境を整え、小さな勝利を積み上げれば、あなたの経験は確実に価値を生みます。


未来のあなたを想像してみよう

もし今日、ほんの小さな一歩を踏み出したら、未来のあなたはどうなっているでしょうか。

YouTubeなら、3年後には数百本の動画が資産として残り、広告収入や案件につながっているかもしれません。
Kindle出版なら、1冊目を出した経験が次につながり、気づけば数冊の本を出して、講演やコンサルの依頼が来ているかもしれません。

逆に、もし今日も「まだ準備が…」と動けなかったら?
来年も同じことを考え、また「やらなきゃ」と自分を責めている可能性があります。

未来の景色を変えるのは、気持ちの強さではなく、今日の小さな行動です。


行動へのヒント

最後に、今日から実践できるヒントをお伝えします。

  • まずは「5分だけやる」と決める
  • 環境を変えて、やらない方が難しい状況をつくる
  • 公言して、自分を縛る仕組みを作る
  • 成果ではなく「行動したこと」そのものを評価して褒める

行動できない自分を責めるのではなく、「環境の力を借りれば誰でも動ける」と理解してください。


まとめ

「やりたいのに動けない」と悩むのは、誰にでも起こる自然なことです。

  • カーネマンの研究が示すように、人は失敗の痛みを過大評価してしまう。
  • 孫子の知恵に学べば、まずは小さな勝利から momentum をつくることが大切だと分かる。
  • ベンジャミン・ハーディの『FULL POWER』は、意志力よりも環境を整えることの重要性を教えてくれる。

つまり、行動できない自分を責める必要はありません。
やるべきことはシンプルです。環境を整え、小さく始め、外に宣言し、続けられる仕組みをつくること。

50代はまだまだ新しい挑戦ができる時期。あなたの経験は誰かにとって大きな価値になります。
さあ、今日の“一歩目”をどんな形で踏み出しますか?


この記事を書いた人|ミライジュウ

メディア関連企業の業務部長。ラジオ演出30年の経験を経て、
「50代からでも“1円を生む力”は育てられる」と信じて発信中。
毎朝4時起きでランニング・筋トレ継続中。
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