解決の前に「問い」がある
「定年後に、どうやって稼いでいけばいいんだろう?」
そんな問いを抱える方は少なくないはずです。長年勤め上げてきた会社を離れ、肩書きや組織の看板に頼れなくなったとき、自分の力で収入を得ることは想像以上に難しいものです。
ただ、そのときに必要になるのは、スキルや資格だけではありません。もっと根本的な「考え方」、つまり物事をどう捉え、どう判断して動くかという力です。
近代日本資本主義の父と呼ばれる渋沢栄一は『論語と算盤』の中で、道徳と経済の両立を説きました。一方、現代に広がる「システム思考」は、複雑な社会を全体的にとらえるための方法です。一見、別のものに見えるこの二つを重ね合わせると、50代からの「稼ぐ力」を鍛える上で大きなヒントが見えてきます。
論語と算盤に込められた視点
『論語と算盤』の思想は、「義(道徳)」と「利(利益)」の両立です。渋沢は「富を追うこと自体は悪ではない。しかし、正しい道理にかなわない富は長続きしない」と説きました。
ここで重要なのは、単なる「清貧」や「きれいごと」ではないということです。彼は実業家として500以上の企業設立に関わった人物。現場で実際に稼ぎ、同時に社会の仕組みを作ってきたからこそ、言葉に重みがあります。
つまり「信用を積み、公益を意識しながら稼ぐ」こと。それが個人の繁栄にも社会の繁栄にもつながるという考え方です。この視点は、定年後に一人で稼ごうとする私たちにも直結します。なぜなら、組織の後ろ盾がなくなったとき、唯一残る資産は「信用」だからです。
システム思考とは何か
では「システム思考」とは何でしょうか。これはMITのピーター・センゲらが提唱した学びの方法で、複雑な物事を部分ごとではなく「全体」として捉える視点を重視します。
人や組織の行動は、因果関係のループや遅延効果の影響を受けています。たとえば、短期的にコストを削ると一時的には利益が増えるかもしれませんが、長期的には信頼を失い顧客離れを起こす、といった構造です。
システム思考は「目先の対症療法」ではなく、「仕組み全体の改善」を狙います。これを個人ビジネスにあてはめると、「目の前の小遣い稼ぎに飛びつく」のではなく、「長期的に続く信頼と収益の循環」をどう作るか、という問いにつながります。
渋沢とシステム思考の接点
ここで強調しておきたいのは、渋沢栄一がシステム思考を学んでいたわけではありません。時代も背景もまったく異なります。
しかし彼の思想には、システム思考的な視点が多く含まれています。道徳と経済の調和は、部分最適ではなく全体最適を求める姿勢です。信用や公益を重んじるのも、短期的な結果より長期的な持続性を優先する発想にほかなりません。
だからこそ、現代に読み直すと『論語と算盤』は「複雑な社会でどう稼ぐか」を考えるためのヒントになるのです。
50代からの稼ぐ力に必要なこと
会社員時代は、与えられた役割をこなせば給料がもらえました。しかし定年後に個人で稼ぐときは、自分で課題を発見し、解決策を形にして価値を提供しなければなりません。
ここで力を発揮するのが、「信用」「公益」「全体最適」という3つの視点です。
- 信用がなければ一度きりで終わる
- 公益性がなければリピーターは生まれない
- 全体最適を意識しなければ継続できない
この3点を押さえている人は、無理に営業しなくても自然と選ばれるようになります。逆に「稼ぐためだけに稼ぐ」姿勢は、すぐに見透かされてしまうのです。
正当な競争に勝つという覚悟
ここで少し寄り道をしましょう。渋沢栄一は戦争を否定する一方で、「正当な戦い」は否定しませんでした。国家存亡のためのやむを得ない戦い、そして商売における正当な競争には「勝たなければならない」とも言っています。
これは50代からの個人ビジネスにそのまま当てはまります。競争を避け、「みんなで仲良く分け合おう」というのは一見きれいですが、現実には選ばれた人だけが仕事を得ます。そこで勝てなければ、生活は成り立ちません。
重要なのは「不正をせず、信用を守ったうえで勝つ」ことです。渋沢が言う「義利合一」とは、まさにこの覚悟を意味します。正当な競争に挑み、そこで勝つ力を身につける。それが稼ぐ力の本質なのです。
実践へのヒント
では、どうすれば「論語と算盤×システム思考」を自分の実践に落とし込めるのでしょうか。いくつかヒントを挙げます。
- 学び続ける習慣を持つ
50代からは新しいことに挑戦しづらくなりますが、ここで学ぶ姿勢を失えば稼ぐ力は育ちません。ITやAI、金融など未知の分野に触れてみることが大切です。 - 小さな信用を積む
約束を守る、期限を守る、丁寧に対応する――地味ですが、これが長期的には最大の資本になります。 - 公益性を意識する
自分が提供するサービスや知識は、誰の役に立つのか?その問いを忘れなければ、自然と人から選ばれるようになります。 - 仕組みを考える
システム思考の発想で、「どうすれば継続的に回る仕組みになるか」を意識しましょう。単発ではなく循環を作ることが目標です。
未来を変えるのはあなた自身
渋沢栄一は「正しい道理に基づいた富は永続する」と語りました。そしてシステム思考は「全体を見渡し、持続する仕組みをつくれ」と教えます。
定年後に個人で稼ぐことは、決して楽な道ではありません。ですが「信用」「公益」「全体最適」「正当な競争に勝つ覚悟」という4つの視点を持てば、道は必ず開けます。
未来を変えるのは環境でも組織でもなく、あなた自身の問いと行動です。
この記事を書いた人|ミライジュウ
メディア関連企業の業務部長。ラジオ演出30年の経験を経て、
「50代からでも“1円を生む力”は育てられる」と信じて発信中。
毎朝4時起きでランニング・筋トレ継続中。
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