伝わる発信とは何か?|“技術よりも本質”に立ち返る情報発信の考え方

「ヒプノティック・ライティング」という言葉に、私は何を見たのか

「ヒプノティック・ライティング」――はじめてこの言葉を聞いたとき、正直、少し怪しさも感じていました。
“催眠的なライティング”なんて、いかにもマーケティング色が強そうで、自分には関係ないと思ったんです。

でも調べていくうちに、この言葉の本来の意味が少しずつ見えてきました。
これはアメリカのマーケター、ジョー・ヴィターレ(Joe Vitale)が提唱した概念で、2000年代に著書『Hypnotic Writing』の中で体系化されたものです。

表面的には「読者を惹きつけて行動させる文章術」とも言われていますが、実際に触れてみると、それは“操作”ではなく、「どうすれば言葉が人の心の奥まで届くのか?」という、ごく人間的な問いに向き合う手法でした。

「自分の言葉が、誰かの中で“自分ごと”になったとき、人は自然に動き出す」
そんな一文に触れたとき、私は思いました。
これは、ただの文章術ではない。
ずっと自分が探していた、“伝わるとは何か”という問いのヒントかもしれない、と。

この気づきは、私の中の「情報発信」の意味を少しずつ書き換えていきました。

「何を伝えるか」より、「どうすれば届くか?」という問い

私たちは、情報発信を始めるとき、まず「何を書こうか?」と考えます。
何を伝えるべきか、どんなテーマが読まれるか、どんなネタが役に立つか――。
それはもちろん大事な視点です。

でも、多くの人が発信を続ける中でぶつかる壁があります。
「読まれているはずなのに、反応がない」
「伝えているつもりなのに、誰にも届いていない気がする」

それは、「情報を発信した」ことと、「相手に届いた」ことの間に、大きなギャップがあるからです。
読まれることと、心に残ることは、まったく別物なのです。

ここで改めて浮かび上がるのが、「どうすれば届くのか?」という問いです。
そしてその問いは、文章のテクニックではなく、もっと根本的な“在り方”に関わってきます。

伝わるとは、“相手の中にすでにある感情”に触れること

人は、論理で動くようでいて、感情で動く生き物です。
だからこそ、「伝える」という行為は、ただ情報を渡すだけでは成立しません。
相手の感情に、そっと触れる必要がある。

そこで大切になるのが、「読者の中に、すでにある感情」に寄り添うこと。
たとえば――
「どうせ自分には無理かもしれない」
「やってみたいけど、失敗が怖い」
「本当は何か始めたい。でも、動けない」

こうした小さな本音に気づき、「それ、わかります」と声をかけるような言葉があったとき、人は「この人は、自分のことをわかってくれている」と感じ始めます。

伝わる言葉とは、心に入り込むような特別な言葉ではなく、もともと心の中にあった感情に“気づかせてくれる言葉”なんだと思います。

発信は「主張」ではなく、「共鳴」のためにある

発信というと、「自分の考えを伝えること」と捉えられがちです。
でも、それは「発信者側の視点」にすぎません。

本当に伝わっているとき、それは“受け手の中にある何か”が動いているときです。
それは、感情だったり、過去の経験だったり、「あのときの私も、そうだったな」という記憶かもしれません。

だから、発信は「主張」ではなく「共鳴」のためにある。

・わかりやすい言葉であること
・きれいに整っていること
・有益な情報であること

これらも確かに大切ですが、それ以上に大切なのは、「この人の言葉は、自分のこととして読める」という感覚です。
そしてそれは、書き方ではなく、“どんな姿勢で書いているか”によって生まれてくるものだと思うのです。

まとめ:「うまく伝える」ことより、「誠実に寄り添う」発信を

ヒプノティック・ライティングという言葉に出会ったことで、私は「技術」ではなく「問い」に導かれました。
どうすれば、言葉は人の心に届くのか?
どうすれば、誰かの小さな背中をそっと押せるのか?

その答えは、テクニックの外側にありました。
「伝えたいことをどう書くか」よりも、「この人は何に悩んでいるのか?」と考えること。
「響かせる言葉」を探すよりも、「その人の中にすでにある声」を探しにいくこと。

それが、情報発信という営みの本質なのではないかと、今は思います。

情報発信は、自己主張ではなく、他者へのまなざしから始まる。
だから、うまくやろうとしなくていい。
届くかどうかより、「誰かを思って書いたかどうか」が残るのです。

そう信じて、私は今日も、言葉を置いてみます。

この記事を書いた人|ミライジュウ

メディア関連企業の業務部長。ラジオ演出30年の経験を経て、
「50代からでも“1円を生む力”は育てられる」と信じて発信中。
毎朝4時起きでランニング・筋トレ継続中。
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