「もっとシンプルに考えなよ」「結局なにがしたいの?」と言われ続けてきた私が、少し救われた話

「もっとシンプルに考えなよ」
「難しく考えすぎじゃない?」
「で、結局どうしたいの?」

これは、私がこれまでの人生や職場で、何度も何度も言われて悩んできた言葉です。

自分なりに相手のことや将来のリスク、色々な可能性を真剣に考えているだけなのに、周りからは「決断が遅い」「話がわかりにくい」と困惑されてしまう。「また考えすぎて空回りしているのかな」「自分のこの性格は直さなきゃいけない欠点なんだろうか」と、ずっとどこかで自分を責め、引け目を感じて生きてきました。

しかしある時、心理学や脳の仕組みに関するある知見に出会ったことで、私の心はスーッと救われました。

「自分がおかしいわけでも、能力がないわけでもなかったんだ」

そう思えたことで、長年の心がすっと軽くなったのです。今回は、私と同じように「考えすぎてしまう言葉」に傷つき、悩んできた方へ向けて、私自身の救いとなった気付きと、心を楽にするための付き合い方をお話ししたいと思います。


なぜ私たちは「何がしたいかわからない」と言われてしまうのか?

長年悩み続けて分かったのは、私たちが「結局なにがしたいの?」と言われてしまうのは、決して自分の意思がないからでも、不器用だからでもないということです。

その理由はシンプルで、私たちの頭の中の情報処理が「高画質な映像」のように細かすぎるからでした。

例えば、何かひとつ提案や返答をする時でも、私たちの頭の中では以下のような分岐が一瞬で発生しています。

  • 「こう言ったら相手に負担をかけてしまうかもしれない」
  • 「この選択肢は安全だけど、根本的な解決にならないかもしれない」
  • 「過去の経緯を考えると、今言うべきタイミングではないかもしれない」

配慮やリスクの予測が頭の中で一気に広がるため、いざ口に出す時には「Aもいいですし、でもBのほうが負担が少ない気もしますし、あるいは焦らなくても…」といったように、選択肢や配慮の言葉(予防線)の羅列になってしまいます。

相手からすると、その配慮の意図まで読み取ることができません。結果として「情報が多くて整理できない」「結局本人はどうしたいの?」と困惑させてしまうのです。

私たちは「何をしたいか分かっていない」のではなく、「考えたことや配慮をそのまま全て言葉に出してしまうため、本質が見えなくなっていただけ」でした。


私が救われた「考えすぎる性質」の正体

世間では「考えすぎ=欠点、優柔不断」と捉えられがちですが、私を救ってくれた心理学の研究(2015年、カナダの心理学者アレクサンダー・ペニーらの研究)では、全く別の側面が示されていました。

それによると、反省や心配を繰り返す傾向(過剰に深く考え込む性質)は、「言語的知能(言葉を使って思考・処理する能力)」の高さと強い相関があるというのです。

言葉を扱う能力が高い人は、目の前の「現実」だけでなく、頭の中で「過去の振り返り」や「未来のシミュレーション」を細かく描写・再現することができます。

  • 事前:頭の中で事前に最悪の展開を思い描くことで、無意識のうちにリスクへの「心の準備(対策の下書き)」をしている。
  • 事後:終わった出来事を言葉にして点検することで、単に通り過ぎるのではなく「次回への教訓」を深く取り出している。

これを知った時、私は「自分が深く考えてしまうのは、ダメな欠陥ではなく、脳の誠実な情報処理のクセだったんだ」と、初めて自分の性質を受け入れることができました。

無理に自分を自慢する必要もありませんが、かといって「直さなきゃいけないダメな自分」と責める必要も一切なかったのです。


深く考えすぎる私が、心を楽にするために始めた「3つの工夫」

「考えすぎる性質」そのものを無理に変える必要はありませんでした。変わらなければいけないのは自分の性格ではなく、「外(相手)に出す言葉の整え方」だけだったのです。

私が実践するようになって、人間関係や仕事が劇的に楽になった3つの方法をご紹介します。

1. 「濃厚なスープ」から「一滴の旨味」だけを渡す

頭の中で10の可能性や配慮を考えたとしても、それを10すべて言葉にして伝えるのをやめました。

  • 頭の中(10の思考):リスクや相手の気持ちをじっくり精査する(自分だけの世界)。
  • 口から出す言葉(1の結論):相手には「希望する結論」と「次の1アクション」だけを簡潔に渡す。

「10時間煮込んだ濃厚なスープから、一番おいしい一滴だけを相手に渡す」というイメージです。相手から「なんでその考えになったの?」と聞かれた時だけ、頭の中にストックしてある残りの理由や配慮を1つずつ出していけば十分だと気づきました。

2. 語尾を「〜したいです」で一度言い切ってみる

配慮深さゆえに、私は無意識に「〜だと思いますが…」「〜という気もします」と語尾を濁しがちでした。これが「なにがしたいのか分からない」という印象を与えていたのです。

そこで、頭の中にたくさんの懸念があっても、伝える時はまず冒頭に「私は〜したいです(〜が良いと思います)」という小さな軸を置く練習を始めました。

  • 以前の言い方:「A案もリスクがありますが、B案だと少し弱くて、でも予算を考えると…」
  • 今の言い方:「私はA案で進めたいです。予算面のリスク対策が一番立てやすいためです」

先に結論を置くだけで、相手は「この人はAが希望なんだな」と安心して話を聞いてくれるようになりました。

3. 「自分一人で考える時間」と「人と話す時間」を分ける

会話や打ち合わせの「その場」でゼロから深掘りしようとすると、返答に時間がかかり、「決断が遅い」と思われてしまいます。

そのため、「会話の場は深く潜る場所ではなく、準備してきたものをサッと出す場所」と割り切るようにしました。

一人でいる時間にじっくり深く考え抜いておき、人と話す本番の場では「事前に考えたことの中から、一番ましな答えをひとつ選んでパッと出す」だけにする。これだけで、周りから「決断が早くなった」と言われるようになりました。


おわりに:同じ悩みを持つあなたへ

今でも、周りから「考えすぎだよ」と言われることはあります。でも今の私は、もう自分を責めたり傷ついたりすることはなくなりました。

そんな時は心の中で、静かにこう思うようにしています。

「自分は色々な可能性や配慮が見えてしまうタイプなんだな。でも、相手を混乱させないために一番シンプルな画面だけを見せてあげよう」

自分の思考の深さを無理に浅く削る必要はありません。深く考えられることは、リスクを避け、人に優しく配慮ができる大切なあなたの長所です。

ただ、その深い考えを「自分の中だけで大切に保持しつつ、外に出す言葉だけを少しシンプルにしてあげる」

この小さなコツを知るだけで、あなたの心は以前よりもずっと軽くなり、これまで苦しかった毎日が少しずつ穏やかで楽なものに変わっていくはずです。

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