『なぜ?』を問い続ける人が未来を変える ― 問題発見力の鍛え方


解決の前に「問い」がある

「問題は、ちゃんと解決してから持ってきてくれ」

そんな空気の中で、長年働いてきたという方も多いのではないでしょうか。
何かがうまくいかないとき、それを“問題”として扱ってもらえるのは、それがすでに誰の目にも明らかな場合に限られます。裏を返せば、「まだ起きていない問題」や、「みんなが気づいていない違和感」に、あえてスポットを当てようとする空気は、なかなかありません。

でもこれ、会社の中ではそれでよくても――いざ、ひとりで何かを始めようと思ったとき、どうなるでしょう?

定年後、組織を離れ、自分の力で稼いでいこうとする。そう決めた瞬間から、誰も「ここに問題があるよ」なんて教えてくれません。そもそも、“問題”というラベルすら貼られていない“もやもや”の中から、何が課題で、どこを変えれば価値が生まれるのかを、自分の頭で見つけ出さなければならないのです。

そう考えると、必要なのは「解決力」ではなく、「発見力」。
何が問題なのかに“気づく力”が、実はもっとも価値ある力なのではないでしょうか。


「問題が見える人」と「問題が見えない人」の違い

では、どうすれば問題に気づけるようになるのでしょう?

実は、問題発見力が高い人には、ある共通点があります。それは、

「なぜ?」を繰り返す習慣があること。

たとえば、飲食店でのこんな場面を想像してみてください。
いつもよりお客さんの入りが悪い日が続いている。スタッフの誰かが「天気が悪いからじゃないですか?」と言ったとしましょう。でも、そこで納得して終わってしまう人と、「本当に天気だけが原因なのか?」とさらに問いを掘り下げられる人とでは、見える世界が変わってきます。

「天気の悪い日が続いても、近くのライバル店は満席だったのでは?」
「そもそも、客足が鈍り始めたのはいつからだろう?」
「季節のメニューがマンネリ化していないか?」
「入り口の雰囲気、暗くなっていないか?」

こうして“なぜ?”を何度も繰り返すことで、表面的な現象の背後にある“本質的な課題”が浮かび上がってくるのです。


常識を疑う力

また、問題発見力が高い人は、「常識」をそのまま受け入れません。
むしろ、多数派がそう言っていることほど、立ち止まって見直す癖があるのです。

これは、長く会社勤めをしてきた人ほど、ちょっと苦手な部分かもしれません。「これが業界の慣例だから」「昔からこうやってきたから」「みんながそうしてるから」。気づかぬうちに、私たちはたくさんの“暗黙のルール”に縛られています。

でも、そこに“盲点”があるのです。

かつて、固定電話が一家に一台あって当然だった時代に、「ケータイで個人が連絡を取り合える未来が来る」と想像できた人はごくわずかでした。でも、そのごくわずかな「ちょっと違和感あるよね?」と感じた人たちが、世界を動かしていったのです。

日々の仕事でも、「これって変だな」「これ、もっと簡単にならないのか?」と疑問を持つことが、実は一番最初の“問題発見”のスタート地点だったりします。


具体と抽象を行き来する力

問題に気づくには、「具体」と「抽象」を行ったり来たりする力も欠かせません。

たとえば、「あの部下は、すぐに指示を忘れる」という現象に対して、すぐに「メモを取れと言おう」と判断してしまうのは、“具体的な現象”にひっぱられすぎている状態です。
一方、「そもそも、なぜ情報が記憶に残らないのか?」と一段抽象化して考えることで、「情報の伝達方法に問題があるのでは?」「本人の注意力が落ちている背景には何がある?」と、より本質的な視点に立つことができます。

逆に、抽象的な言葉(たとえば「やる気がない」「意識が低い」など)を使うときも、その言葉を具体的な行動や状況に落とし込む力が必要です。

この「行き来」が上手な人ほど、問題を立体的に捉えられるようになるのです。


問題発見力は“特別なスキル”ではない

ここまで読んで、

「でも、自分にはそんな分析的な思考はないよ」
「論理的とか、メタ認知とか、そういうのは若い人のものでしょ」

と思われた方もいるかもしれません。

でも、心配はいりません。
問題発見力というのは、もともと誰もが持っていた力なのです。ただ、会社生活の中で「余計なことは言わない方がいい」「気づいても面倒なことになるから見なかったことにしよう」と、長年かけて“殺してきた”力とも言えるのです。

子どもの頃を思い出してみてください。「なんで?」「どうして?」と何度も大人に問いかけて、煙たがられたことはありませんでしたか?
本当は、あの「しつこく問い続ける姿勢」こそが、問題発見の原点なのです。


これからは、“問いを持つ人”が重宝される

会社の外に出て、ひとりで仕事を始めようとしたとき、「問題に気づける人」と「気づけない人」では、雲泥の差がつきます。

言われたことを完璧にこなすスキルも大切ですが、仕事の種そのものを見つけてくる力は、もっと大切です。そしてそれは、「なぜ?」「本当にそうか?」「他に見落としている視点はないか?」と、問いを持ち続けることでしか磨かれません。

自分の力で稼ぐということは、言い換えれば、自分で問いを立て、仮説を立て、検証していく連続なのです。


おわりに ― 違和感をスルーしない人でいよう

「なんとなく、しっくりこない」
「みんなそう言ってるけど、ほんとかな?」
「これ、もっとよくなる余地がある気がする」

こうした“違和感”に出会ったとき、スルーせずに立ち止まれるかどうか。
それこそが、問題発見力の第一歩です。

50代からのキャリアは、言われたことをこなす時代の延長ではありません。
自分の問いを、自分で持つ時代。

問題は、すでに目の前にある。
あとは、それに気づけるかどうか――。それだけなんです。

この記事を書いた人|ミライジュウ

メディア関連企業の業務部長。ラジオ演出30年の経験を経て、
「50代からでも“1円を生む力”は育てられる」と信じて発信中。
毎朝4時起きでランニング・筋トレ継続中。
▶︎ 運営者プロフィールはこちら

おすすめ記事

コメント