何をすべきかわからない人のために|アンリ・ベルクソンの「持続する思考」で人生の軸を見つける

「何をすべきかわからない」の正体とは?

年齢を問わず、多くの人が一度は「何をすべきかわからない」という壁にぶつかる。
それは、転職を考える人にも、独立を模索する人にも、学生にも起こる心の停滞だ。

この悩みの裏には、単なる「選択肢の多さ」ではなく、自分の中の軸が見えなくなる不安が潜んでいる。

たとえば——
過去の経験がいまの時代に通用しない気がする。
新しいスキルを学んでも、すぐに陳腐化しそうで踏み出せない。
自分の強みがわからない。

それは能力不足ではない。
むしろ、「変化し続ける自分」を、固定された概念で理解しようとする思考の習慣が、視野を狭めているのだ。

「何をすべきかわからない」と感じるのは、心が「変化を受け入れる準備をしている」証拠でもある。
その流れをどう掴むか——フランスの哲学者アンリ・ベルクソンがヒントをくれる。


結論:人生の資産を「新しい価値」に変換する

ベルクソンは「時間とは流れである」と説いた。
時計で測れる“量”ではなく、心で感じる“質”の時間。
これを「持続(durée)」と呼んだ。

この考えを人生に応用すると、こうなる。
「何をすべきか」を探すのではなく、「これまでの経験が今どんな流れをつくっているか」に気づくこと。

私たちはしばしば、過去を「終わった出来事」として切り離してしまう。
だがベルクソン的に言えば、過去は現在にも息づき、常に未来へと流れ込んでいる。

つまり、過去の経験は“化石”ではなく、“素材”だ。
あなたの人生の流れの中で、いつでも新しい価値を生み出す源になる。

「何をすべきか」は、外にある“正解”ではなく、内側の“流れ”から立ち上がるものなのだ。


アンリ・ベルクソンの「持続する思考」とは?

ベルクソンは、私たちが現実を理解するために使う知性を「映画的メカニズム」と呼んだ。
映画は静止画の連続でできているように、私たちの思考も現実を“止まった断片”として切り取る。
だが、本当の世界は静止していない。

呼吸も感情も、常に動いている。
現実は「変化そのもの」だ。
それを理解するために、ベルクソンは「持続する思考」を提唱した。

  1. 時間を質として感じる
     同じ1時間でも、楽しい時間は一瞬、退屈な会議は永遠に感じる。
     この主観的な流れこそが「持続」であり、そこに“自分だけのリズム”がある。
  2. 変化を恐れず、生成を見る
     ベルクソンは「存在とは変化である」と言った。
     木は芽吹き、老い、朽ちていく。
     その“変化のプロセス”が生命であり、創造そのものだ。
  3. 直観でとらえる
     持続は、論理やデータでは把握できない。
     静かに自分を観察し、心の動きを感じ取る——それが直観だ。
     直観とは、知識よりも深い“気づき”の力である。

この思考が解決する3つの迷い

ベルクソンの視点を日常に取り入れると、心の霧が晴れていく。
具体的には、次のような変化が起きる。

  1. 「外の正解」探しから解放される
     他人の基準や時代のトレンドを追うのではなく、
     「自分の中に流れている感情と経験の連続性」に目を向けられるようになる。
  2. 過去を再定義できる
     失敗も遠回りも、終わったことではなく“素材”として使える。
     点で見れば無意味でも、線として見れば、そこにしかない物語が生まれる。
  3. 変化に対して安定した心を持てる
     変わること自体を“軸”にする。
     すると、どんな変化の波も恐れる必要がなくなる。
     揺れているようで、実は深い部分ではブレなくなる。

ベルクソン思想と響き合う他の哲学

ベルクソンの「持続する思考」は、他の文化や哲学にも通じている。

古代ギリシアのヘラクレイトスは「万物流転」と言った。
同じ川に二度入ることはできない——それは、「変化こそ実在」という意味だ。

禅では「今、ここ」という言葉がある。
過去や未来という概念ではなく、この瞬間の流れに意識を向ける。
この“今に生きる感覚”も、ベルクソンの「持続」と同じ根を持っている。

現代のマネジメントでも、「結果よりプロセス」を重視する考え方が浸透している。
仕事も人生も、「どう変化していくか」にこそ価値が宿る時代になったのだ。


実践ステップ:持続する思考を日常に落とし込む

哲学は読んで終わりでは意味がない。
ベルクソンの「持続する思考」を日常に活かすための3つのステップを紹介する。

  1. 過去を“流れ”で棚卸しする
     経歴を箇条書きにするのではなく、
     「そのとき何を感じ、どう変わったか」を物語のように書き出してみよう。
     出来事ではなく、心の動きがあなたの軸を映し出す。
  2. 直観を静かに観察する時間を持つ
     情報を止め、心の声を聞く時間をつくる。
     散歩、瞑想、ランニング——動と静のリズムを通じて、
     自分の中の“自然な流れ”を取り戻せる。
  3. 小さな創造を始める
     大きな計画はいらない。
     SNSでの発信、絵を描く、文章を書く、誰かと共有する——
     そうした小さな行動が、「持続」を具体化させる。
     変化を始めること自体が、すでに創造だ。

人生の軸は「変化の中」にある

ベルクソンは言った。
「存在するとは変化すること。変化するとは成熟すること。成熟するとは限りなく自己を創造し続けること。」

人は“正しい答え”を求めて立ち止まる。
だが本当の答えは、動きの中にある。
過去の経験も、今の迷いも、未来への布石だ。

変化を怖がるより、変化を信じること。
それが「持続する思考」で生きる、ということだ。
そして、あなた自身がその流れの主役である。


この記事を書いた人|ミライジュウ

メディア関連企業の業務部長。ラジオ演出30年の経験を経て、

「誰でも“1円を生む力”は育てられる」と信じて発信中。

毎朝4時起きでランニング・筋トレ継続中。

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