最近、「JPYC」や「デジタル円」という言葉を耳にする機会が増えてきました。
どちらも「日本円をデジタル化したもの」に見えるので、同じ仕組みのように感じてしまう人も多いでしょう。
実際、私自身も以前デジタル円(CBDC)について学んで記事を書いたあとに、JPYCという新しい存在を知ったとき、両者の違いがよくわからず混乱しました。
「どっちも円のデジタル版なら同じでは?」と一瞬思ったのです。
けれども調べてみると、両者は根本から性格が異なります。
この違いを知らないままでは、今後のお金の流れや決済の未来を理解するうえでつまずいてしまうでしょう。
この記事では、JPYCとデジタル円(CBDC)の違いを順序立てて整理しながら解説します。
読み終えたときには、両者の位置づけがスッキリと理解でき、今後の備え方もイメージできるはずです。
通貨と電子マネーの違いを押さえる
まずは基本の確認から始めましょう。
私たちが普段使っている「お金」には、大きく2つの種類があります。
ひとつは通貨=法定通貨です。日本円は国家と日本銀行が保証する「お金そのもの」で、国内での支払いには強制通用力を持ちます。誰もが拒否できない支払い手段です。
もうひとつは電子マネーやプリペイドです。SuicaやPayPay残高のように、あくまで企業が約束して発行する「代替的なお金」にすぎません。便利ではありますが、利用範囲は限定され、万一発行企業が破綻すれば価値が消えるリスクもあります。
この「誰が信用を担保しているのか」という視点を押さえることが、JPYCとデジタル円を理解する最初のステップになります。
JPYCとは何か
JPYCは、JPYC株式会社が発行する円建てステーブルコインです。
ステーブルコインとは「法定通貨に価値を連動させる暗号資産」のこと。JPYCの場合は「1JPYC=1円」を維持するよう設計されています。
仕組みを簡単に言えば、発行会社に日本円を支払うと、その分のJPYCを受け取り、ブロックチェーン上で利用できるようになります。EthereumやPolygonなど複数のチェーンに対応し、取引は即時かつ低コストです。
法的位置づけとしては「前払式支払手段」にあたり、電子マネーの一種と見ることができます。イメージとしては「ブロックチェーン版のSuica残高」に近いでしょう。
利用方法も多様で、提携ECサイトでの決済、友人への送金、さらにはDeFi(分散型金融)での運用などが可能です。
すでに一部のユーザーはJPYCを使ってポイントを交換したり、ネットサービスを利用したりしています。
ただし注意すべき点もあります。
JPYCの価値はあくまで発行企業の信用に依存しています。SuicaやPayPayと同じように「1円=1JPYC」が守られるのは、発行体が健全に運営されている限りの話です。万が一破綻した場合には、全額が保証されるわけではありません。
デジタル円(CBDC)とは何か
次にデジタル円、つまりCBDC(中央銀行デジタル通貨)を見てみましょう。
これは日本銀行が発行を検討している「円のデジタル版」であり、単なる電子マネーではありません。
デジタル円は法定通貨そのものです。現金と同じ効力を持ち、国家の信用で裏付けられます。もし発行されれば、財布に入っている1,000円札と同等の価値をデジタルで持ち歩けるということになります。
発行の狙いは大きく3つあります。
ひとつは、現金利用が減少している社会で、誰もが安心して使える新しい決済インフラを整備すること。
もうひとつは、災害時やシステム障害時に現金に代わる強固な仕組みを用意すること。
そして最後に、海外のCBDCと連携しやすくすることで国際競争力を確保することです。
ただし、課題も山積みです。
利用者のプライバシーをどこまで保護するか、銀行や電子マネー事業者との役割分担をどうするか。制度設計は慎重に議論されており、発行されるとしても最速で2026年以降と見込まれています。
JPYCとデジタル円の違い
ここで両者を並べると、その違いがはっきりします。
JPYCは「民間企業が発行するプリペイド型ステーブルコイン」。
デジタル円は「国家が発行する法定通貨のデジタル版」。
発行主体が違えば、信頼の根拠も、法的効力も、利用できる範囲も変わります。
JPYCはすでに利用可能で、特にWeb3やDeFiの分野で実験的に使われています。
一方、デジタル円はまだ実証実験中であり、社会基盤としての整備はこれからです。
つまり、両者を混同するのは危険です。
JPYCはスピード感と柔軟さが魅力ですが、リスクも抱えています。
デジタル円は制度の安定性と信用が強みですが、導入まで時間がかかります。
なぜ違いを理解しておくべきか
では、なぜ私たちはこの違いを今から理解しておく必要があるのでしょうか。
理由のひとつは、決済や会計に関する影響です。
もし顧客から「デジタル円で支払いたい」と言われたら、企業は対応できなければ取引を逃すかもしれません。
逆にJPYCをうまく取り入れることで、新しいサービスや顧客層を獲得できる可能性もあります。
もうひとつは、未来の働き方や生活設計に関わるからです。
デジタル円が社会に普及すれば、給与の支払い、税金の納付、年金の受け取りなど、あらゆるお金の流れが変わります。
JPYCのような民間通貨は、投資や副業、Web3ビジネスの現場で新しい収益チャンスを生むかもしれません。
知らないままでは、時代の変化に振り回されます。
理解しておけば、変化を先取りして動くことができます。
未来への備え方
今からできることは大きく3つあります。
ひとつ目は、キャッシュレス決済や会計の基礎知識をアップデートすること。デジタル通貨が入ってきても慌てず処理できるように準備しておきましょう。
ふたつ目は、セキュリティ意識を高めること。ウォレットの管理や個人情報保護の感覚は、今後ますます重要になります。
そして最後に、情報を追い続けること。JPYCもデジタル円も制度や仕組みが日々変わっています。知識をアップデートする習慣が、未来のお金を味方につける鍵になります。
まとめ
JPYCとデジタル円は、名前は似ていてもまったく別物です。
JPYCは「民間が発行するプリペイド型のステーブルコイン」。
デジタル円は「国家が発行する法定通貨のデジタル版」。
両者の違いを順序立てて理解すれば、混乱せずに整理できます。
これから数年で日本のお金の姿は確実に変わります。
変化に振り回される側ではなく、活かして動ける側に回りましょう。
この記事を書いた人|ミライジュウ
メディア関連企業の業務部長。ラジオ演出30年の経験を経て、
「50代からでも“1円を生む力”は育てられる」と信じて発信中。
毎朝4時起きでランニング・筋トレ継続中。
▶︎ 運営者プロフィールはこちら
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