自由と責任のはざまで|50代が学ぶトルストイと岡本太郎の生き方

50代になると突き当たる「自由」と「責任」

若い頃は自由といえば「好きなことを選ぶこと」でした。けれど50代になると、どうでしょう。子どもの進学や独立、親の介護、自分の健康、そして定年後の生活設計。責任の重さはむしろ増していくのに、心の中では「もっと自由に生きたい」と思う気持ちがどんどん強まっていく。

この「責任と自由のはざま」で揺れる感覚こそが、50代という年代の本質かもしれません。

ここで思い出してほしいのが二人の巨人です。

19世紀ロシアの文豪、トルストイ。『戦争と平和』『アンナ・カレーニナ』で知られ、世界文学の頂点に立った人物です。

そして20世紀日本の芸術家、岡本太郎。あの太陽の塔を生み出し、「芸術は爆発だ!」と叫んだ男です。
ジャンルは違えど、二人とも「自由と責任」というテーマに全力でぶつかり続けました。

トルストイの「責任なき自由」

晩年のトルストイは、財産や著作権をすべて放棄し、清貧に生きたいと強く望みました。彼にとって自由とは、財産や地位から解放され、神の前で純粋に生きることだったのです。

しかしその理想は、妻ソフィアや子どもたちにとっては生活基盤を失うことを意味しました。家族を支えてきた著作権収入を手放すなど、とても受け入れられるものではなかった。トルストイの純粋な自由は、結果として「家族責任を切り離した自由」になってしまったのです。

そしてついに彼は家を飛び出し、鉄道駅で孤独のまま亡くなりました。理想は崇高でしたが、その代償はあまりにも大きかったのです。

岡本太郎の「制約を糧にする自由」

一方で、岡本太郎の自由はまったく異なる形をしています。彼は『自分の中に毒を持て』の中でこう語っています。

「ぼくはこういう制約の多いところでこそ自分のしたいことをするのがほんとうの行動になると思う。むしろ社会や周囲の全部が否定的であればあるほど行動を起こす」

この言葉をどう解釈するか。私なりに感じるのは、これは「制約を避けるな」という話ではなく、むしろ「制約を創造の燃料に変えてしまえ」ということだということです。
普通なら「やりにくい」「邪魔だ」と思う環境や否定的な声を、足かせではなくジャンプ台にする。壁を壊そうと全力でぶつかるからこそ、新しい形が生まれる。岡本太郎の芸術観は、制約と闘う中でこそ自由を手にする、という逆説なのです。

太陽の塔をつくるときもそうでした。万博という巨大な国家事業に対して、ただ祝祭を飾るモニュメントでは終わらせまいと挑み、批判や嘲笑を浴びながらも自分の魂を爆発させた。否定されるほど燃える。これが岡本太郎の「自由」でした。

50代にとっての教訓

二人を比べてみると、私たち50代にとって必要な姿勢が浮かび上がります。トルストイのように責任を切り離して自由を求めれば、理想は純粋でも、現実は崩れていく。岡本太郎のように責任や制約を抱えたまま爆発するのは苦しいけれど、そこには現実と折り合いをつけながらも自由を生きる力がある。

だからこそ、50代に必要なのは「責任を引き受けたうえでの自由」だと思うのです。

FP視点から見た「責任と自由」

お金の世界に置き換えると、このことはさらに鮮明になります。
老後資金を考えずに趣味にすべてを費やすのは、一時の自由かもしれませんが、やがて家族に負担を残すことになる。逆に、必要な生活費や医療費をしっかりシミュレーションで押さえておき、そのうえで余ったお金を趣味や挑戦に使うのなら安心して楽しめます。

だからこそ、積立投資などで責任の部分を自動化し、余白で自由を謳歌する仕組みをつくることが大切です。責任を守りながらも、自分の人生に余白を確保できる。これが「責任を前提にした自由」です。

習慣設計における「責任と自由」

習慣も同じです。健康のための運動や学びは「責任の習慣」です。そのうえで、趣味や副業、発信といった「自由の習慣」を重ねるとバランスがとれます。

大切なのは、小さく始めることです。5分の読書、10分のランニング。記録をつけて可視化すれば積み重ねが“見える化”され、続けやすくなる。責任の習慣と自由の習慣をセットにして、ご褒美のように循環させていく。そうすれば両立は難しくなくなります。

まとめ

トルストイの自由は純粋で崇高でしたが、責任を切り離したために孤立を招きました。岡本太郎の自由は、制約のただ中で戦う自由であり、創造を爆発させる原動力になりました。

50代の私たちに必要なのはもちろん後者です。責任を放棄するのではなく、責任を引き受けながら自由を創り出す。資産設計でも習慣設計でも同じで、責任の部分をしっかり固め、そのうえで自由の余白を設けることが成熟した自由の形なのです。

結論として言えるのはこうです。50代の自由とは、逃げる自由ではなく、引き受ける自由。その自由こそが、人生を豊かにする一歩になるのです。

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この記事を書いた人|ミライジュウ
メディア関連企業の業務部長。ラジオ演出30年の経験を経て、
「50代からでも“1円を生む力”は育てられる」と信じて発信中。
毎朝4時起きでランニング・筋トレ継続中。
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