ビジネスが軌道に乗り、1人で回せなくなった時、誰もが真っ先に考えます。
「外注さんに手伝ってもらおう。そうすれば自分は楽になれるはずだ」
しかし、期待に胸を膨らませて外注を始めた多くの人を待っているのは、皮肉にも「以前より忙しくなった自分」です。自分でやれば30分で終わることに、説明、確認、修正指示を繰り返して3時間かかっている。結局、「自分でやった方が早い」と深夜に一人で手直しをする。
なぜ、お金を払って人を雇っているのに、あなたはちっとも楽になれないのでしょうか?
その理由は、あなたが「忙しさの量」だけを解決しようとして、「忙しさの構造」を放置しているからです。
犯人は「コミュニケーションコスト」という名の損失
外注して楽にならない最大の原因は、コミュニケーションコストの爆発です。自分の中にあるイメージを言語化し、他人に正確に伝えるのは、想像以上に高度なスキルを要します。
「作業の外注」は、実は「マネジメント」という新たな、それ非常に重い業務を自分に課しているのと同じなのです。指示を出すのはあなた、判断するのもあなた、最終チェックもあなた。これでは、あなたがボトルネックであるという構造は1ミリも変わっていません。
「現場」を知るプロが見る、1人ビジネスの致命的な欠陥
ここで少し、私自身の話をさせてください。
実は私は、イベントプロデューサーとして大規模な現場を仕切り、同時にラジオディレクターとして30年近く番組を制作し続けてきた経験があります。
その「プロの現場」の視点から今のフリーランスの状況を見ると、一つ、決定的な間違いを犯していることに気づきます。
それは、全体を見回して実行するキーマンである「ディレクター」という役割が不在のまま、いきなり「作業スタッフ」を雇おうとしていることです。
プロの制作現場には、絶対に崩してはいけない三層構造があります。
- プロデューサー: 全体のコンセプト、予算、成果に責任を持つ。
- ディレクター: 全体を見回し、プロデューサーの意図を実行に移すキーマン。 スケジュール、構成、演出を仕切り、現場を動かす。
- テクニカルスタッフ: 台本、カメラ、音響、編集などの実作業を行う。
フリーランスの多くは、自分が「プロデューサー」でありながら、同時に「現場の作業員」も兼ねています。パンクしたからといって、いきなり「編集スタッフ」という末端の作業だけを外出ししても、それを仕切るディレクターがいないため、結局プロデューサーであるあなたに全ての判断を仰ぎに来てしまうのです。
プロの教訓:なぜ「丸投げ」は失敗するのか
さらに、ラジオやイベントの現場を30年見てきて痛感している「鉄則」があります。
それは、「スタッフの座組(チーム編成)を決めるのは、必ずプロデューサーの仕事である」ということです。
手間を省こうとして、「ディレクターさん、あなたのやりやすいようにチームを組んでください」と丸投げする人がいますが、これは極めて危険です。
なぜなら、ディレクターが自ら集めたチームは、プロデューサーではなく「ディレクター」の顔色を見て仕事をするようになるからです。
現場のやりやすさが優先され、プロデューサーであるあなたの意図や熱量が、制作の過程で少しずつ薄まっていく。プロデューサーは、各セクションのプロを自分で選び、そのメンバーをディレクターに預けて仕切ってもらう。この距離感と構造こそが、意図したクオリティを維持する唯一の方法なのです。
デジタル時代の「ディレクター」をどう立てるか
とはいえ、1人ビジネスで最初から優秀なディレクターを雇うのは現実的ではありません。そこで活用すべきなのが、「システムによる自動化」です。
デジタルコンテンツビジネスにおける「ディレクター」の役割の一部は、人間ではなくシステムに担わせることができます。
- ステップメール: 24時間、あなたに代わって価値観を伝え、信頼を構築する。
- セールスファネル: 購入までを自動でエスコートする。
- 制作マニュアル: 演出意図や判断基準を言語化し、誰がやっても80点以上が出るようにする。
まず、この「システムという名のディレクター」を構築してください。自分が指示し続けなければ止まってしまう現場を、システムによって「自動で進行する現場」に変える。その上で、デザインや広告などの「専門スタッフ」の力を借りる。
「仕組みが先。外注はその次。」この順番を間違えないことが、自由を手にするための絶対条件です。
プロデューサーの本当の仕事とは
プロデューサーが現場で汗をかきすぎているうちは、そのプロジェクトは二流止まりです。
本当のプロデューサーの仕事は、最高の座組を作り、全体を見回す最高のディレクター(あるいはその代わりとなる仕組み)を用意し、あとはプロのスタッフやシステムが暴れ回るのを、一歩引いたところから見守ること。そして、最後に責任を取ることです。
YouTube制作の外注であれ、コンテンツ販売であれ、同じです。
「作業」を外に出すのではなく、「構造」を外に出す。あなたが現場から離れれば離れるほど、ビジネスはより大きく、より自由に回り始めます。
「自分でやったほうが早い」という呪縛を解き、プロデューサーとしての視座を手に入れてください。その先にしか、あなたが本当に求めていた「自由」はありません。

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