はじめに:現場から外された?それって本当に「降格」?
「現場を外された」「もう若くない」「昔ほど求められていない」──
50代を迎えた会社員の多くが、こうした言葉をふと胸の中に浮かべることがあります。
若い頃はがむしゃらに働いて、少ない睡眠時間も休日出勤も気にならなかった。
でもあるとき、気がつくんです。
「もうあの働き方はできないな」「注目の新番組のスタッフには声がかからなくなったな」と。
かつて私は、ラジオディレクターとして数多くの番組を手がけ、イベントプロデューサーとして現場を走り回っていました。
本当に、仕事が楽しくて仕方なかった。
だけど今、はっきり言えるのは──
「あれは、若さがあったからこそできたこと」だったということです。
年齢とともに変化していく体力、求められる役割。
それを“劣化”ととらえるのではなく、“進化”ととらえる視点が今、必要とされています。
若さのパワーで突っ走っていた頃の仕事
若い頃は、多少の無理が効きました。
ラジオの特番で深夜に現場を出て、数時間後にはスタジオ入り。
イベントの本番で徹夜しても、達成感と興奮で乗り切ることができた。
「おもしろいものをつくる」その一心で、仲間とともに走っていました。
30代、40代のころは、自分の感性が番組やイベントの“ど真ん中”にありました。
どんな企画をやるか、誰を呼ぶか、どこで展開するか──
時代の「今」を読み取って表現することが、自分の価値そのものでした。
でも、その対象が「若者」であるうちは、自分も“若者”でいられた。
40代後半、50代に差し掛かってくると、徐々にそのポジションから外れていく。
若者向けの番組やイベントに、“50代の感性”を持ち込む場面は自然と減っていきました。
やがて「新番組の打ち合わせに呼ばれない」ことが増え、「後輩が前線に立つ」のが当たり前になっていく。
そのとき、正直、少し寂しさを感じたのも事実です。
「現場を外された」と思ってしまう心理
私が今所属している部署は、IT本部の業務部。いわば、事業全体の“土台”を整えるポジションです。
経理、人事、総務、広報などと日々やりとりをして事業の予算、人材配置、制度運用といった裏方業務を担っています。
一見すると“日陰”のような印象を持たれることもあります。
実際に50歳そこそこの人が異動してくると、「ああ、現場から外されたんだな」と感じている様子が伝わってくることもあります。
でも、私は声を大にして言いたいんです。
「それ、本当にもったいないです」
現場を去ること=戦力外、ではありません。
むしろそこから、「会社全体を動かす仕事」が始まることだってあるんです。
今の立場で、できることがあるという実感
現在の私は、番組やイベントの制作をしていたころとはまったく異なる役割を担っています。
けれど、そのどれもが「自分が歩んできたキャリアの延長線上」にあると感じています。
業務推進部での仕事は、一つひとつが会社全体に関わるものです。
組織をどう動かすか、どう改善するか──いまは「点」ではなく「線」や「面」で物事を見る立場になりました。
それを支えているのが、ここ数年で取得した簿記やFPなどの資格です。
若い頃は「会計なんて、現場には関係ない」と思っていましたが、
いまはその知識が仕事の中核になっています。
現場での経験が“感覚”を育て、
業務部での仕事が“構造”を育てる──
そう実感できるようになったのは、50代になったからこそかもしれません。
スキルアップして、年齢に合ったチャレンジを
50代、60代になると「成長」という言葉から距離を置きたくなる気持ちも、正直わかります。
でも、それって「無理な競争から降りる」という意味であって、
「自分を止める」ことではないはずです。
私は50代に入ってから簿記を学び、FP資格を取り、今ではChatGPTやスプレッドシートで業務改善の提案もしています。
ラジオの現場では見えてこなかった「数値」や「全体像」の世界に、自分が興味を持つなんて、昔の私は想像もしていませんでした。
今の時代、学び直しはまったく特別なことではありません。
むしろ、経験がある人こそ、学びが“価値に直結する”のだと思います。
会社から「現場を離れてほしい」と言われたら、
それは「別の強みを発揮してくれ」ということかもしれません。
役割が変わったら、視点も変えてみよう
キャリアにおいて、“どこに立っているか”よりも、“どう見るか”のほうが重要です。
若さを武器にしていたころは、鋭さや瞬発力が求められました。
でも、今は違う武器を持っています。
経験からくる全体感、複数の部門をつなぐ調整力、人を育てる余白。
そして何より、過去を肯定しながら、未来にも可能性を感じられる視点です。
だから私は、「現場を離れたら終わり」ではなく、
「現場を離れても、むしろこれから」だと、胸を張って言いたいのです。
この記事を書いた人|ミライジュウ
メディア関連企業の業務部長。ラジオ演出30年の経験を経て、
「50代からでも“1円を生む力”は育てられる」と信じて発信中。
毎朝4時起きでランニング・筋トレ継続中。
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